脱臼は捻挫です。

肩関節脱臼のレントゲン画像

なんとぶっそうなタイトルなんでしょう…

地球って宇宙という大海原に浮かんでいて、目には見えないエネルギーがあるんです。それをおへその上にある丹田というところに貯めると、脱臼していた肩がみるみるうちに治って…

などという話ではありません。。。。

種明かしをすると今回のお話は、脱臼は整復固定をした後に対診すると脱臼という診断を受けられず、「捻挫」とお返事が返って来ることがあるというお話です。

決して、ほねゆきが脱臼も捻挫のうちだなんて言っているわけではありません。法に則って、脱臼はしっかりと後療の同意を提携先の医院で頂いて施術しています。毎日のように紹介状を書いても快く受け入れてくださる提携先の先生には感謝しています。

具体的にどういったエピソードなのか、お話しします。

ほねゆきの知り合いのT先生からの相談です。

T先生は都内に20坪くらいの接骨院を運営しています。この間、メッセンジャーアプリでこんな内容でメッセージが来ました。

「脱臼の患者さんの整復(応急手当)を行った後、後療施術を行うために対診をお願いしたところ、捻挫ですという回答が届いたのですが・・・」

T先生からの切実な質問が先日、メールボックスに入っていました。骨折の場合であれば整復を行っても骨折線は残っていますから、骨折との診断が下されるでしょう。一方、脱臼では、整復を行ってしまうと関節窩と関節頭の位置関係は正常になってしまいますから、脱臼とは診断されにくいでしょう。

柔道整復師法第17条では、脱臼や骨折の患部に後療施術を行おうとする場合は医師の同意を必要とする旨が規定されています。また、但し書きとして、応急手当の場合は医師の同意を得ることなく行えると規定されています。

脱臼の診断がなければ施術できない?

さて、この法第17条にある「医師の同意」はどういった理由から規定されたのでしょうか?

柔道整復師は医師のようにX線装置などの科学的な診断機器を持ち合わせていない(不利というわけではない)ばかりか、何よりも診断権を有していません。それだけに、脱臼で骨折を伴っているものを見落とす可能性もあるでしょうし、骨折でも観血療法を適用すべきかどうかの判断がつき辛いですね。そのような理由から、脱臼や骨折の後療施術を行おうとする場合には、医師の同意を得るようにとの規制があるものと解すことができます。

次に、この「医師の同意」とは、何についての同意でしょうか?

これは、「患部に対して後療施術を柔道整復師が行っても大丈夫ですよ」と言うものです。言い換えれば、「脱臼である」とか「骨折である」と言う診断は、この「同意」の中には含まれていないと解すことができるでしょう。

脱臼の場合、それを整復してしまうと関節構成体の位置関係は正常(原位置)となります。結果、捻挫と言う診断が下されても致し方ないでしょうね。「なんで脱臼じゃないんだ!」と言っても、「いや、脱臼してないけど?」と返されちゃいます。整復したんだもの。

それなら、脱臼の整復を行わずに対診?いえいえ、応急手当で1分1秒でも早く、整復を行って痛みから解放してあげるべきですね。T先生の対処に間違いはありません。

対診先からの回答が「捻挫」であると言うことは、いわばT先生の整復が適切に行われたことを裏付けているわけです。また、この回答をもって後療施術を行っても良いと解すことができるのではないでしょうか?もし、後療施術について同意が得られないのであれば、対診先からの回答は後療施術を禁じる内容になるはずです。

完全脱臼であれば、その外観を見て患者さんでさえ脱臼であることに予想がつくはずです。いざとなれば、患者さんが受傷時(整復前)の外観について述べてくれるでしょう。外観写真などを書類として添付することも可能かと思いますが、普段から対診している先生であればそこまでする必要はなさそうですね。

太郎であれば、以上のように解釈して、脱臼として保険請求を行います。

脱臼の後療施術を行おうとする場合に必要となる医師の同意に関する考え方をはじめ、その場合の保険請求上の取り扱いに関しては、所属される団体によって異なる可能性があります。実際の実務については、所属される団体の保険部に問い合わせるなどして行って下さい。

ほねゆきが学生時代に学校の先生に紹介していただいた本で、知る人ぞ知る名書です!古い書籍ですが(医学書にしては新しい?笑)、触診技術も載っていて見ていてワクワクします。それほど高額でもないので、すでに臨床に出ている先生にもおすすめの医学書です。

『図解四肢と脊椎の診かた』スタンレー・ホッペンフェルド 1984年 医歯薬出版

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3件のコメント

いつも勉強させていただいております。

脱臼の場合は私も写真を添えます。
家族の方などのお付き添いもお願いしています。

ほねゆき先生は、レポの方法は何でやられていますか?

私は渡辺法が第1選択です。

もう1つ先生に質問がありまして、エコーの写真を添えるのはどう思われますか?

いつもコメント御返事ありがとうございます。

ktさん

ありがとうございます。
外観写真を添えることはいいと思いますが、あまりクドくならないことが重要だと思います。ほねゆきが対診された側であれば、写真が入ってて、エコー画像もあって、紹介状の文章も長くて、なんていうクドいやり方をする柔整師は正直めんどくさいです。

脱臼をしていたかどうかなどは患者さんに聞けば容易に想像できます。

脱臼という診断名がなければ、その後に接骨院で脱臼として施術を行えないという保険組合なのでしたら、そういった場合があるということをストレートに提携先に話しておくことが必要かと思います。

人間関係の構築の問題でしょうか。

したがって、エコー画像はほねゆきは添付しません。エコーはどこを描出しているか分かりずらいですから、目的を達成しない可能性が高いのと、上記のようにそもそも添付してもあまりメリットがありません。

肩関節脱臼の整復法については、危険でなければなんでもいいと思っています。ワタナベカズトミ先生の方法がよければそれでもいいですし、ゼロポジション法でもヒポクラテス法でも、患部に適した方法を選択するべきだと考えています。肩関節脱臼にはこれ!のような考えはむしろ危険だと思います。

コメントいつもありがとうございます。逆質問になりますが、なぜ渡辺法を第一選択とされていますか?^_^

ご丁寧な御返事をいただきありがとうございます。

医師の先生との関係性と、簡潔かつ丁寧な連携を心がけます。

私もゼロ、ヒポクラテスと選択肢を持っていますが、私的に愛護的にやりやすいのが渡辺先生のやり方でした。

状況や患者さんの体格などに合わせて選択していきます。

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