あとがき
この世にブログというものが誕生してからはや数十年、あとがきから始まるブログが過去に存在したのでしょうか。いいえ、ありません。そんな、人がしないようなことをしたくなるほねゆきです。おはようございます。(現在、夜の3時執筆中。)
今回は、「骨折が接骨院にきた!」とかそういった話ではなく、イレギュラーなパターンとして「頭部外傷が接骨院にきたら!」というお話です。自分で施術所をかまえていない方も、自分が院長で同じような患者さんがきたらどうするかなと考えながら話を読み進めてみてください。
決してほねゆきの対応が完全マルなわけではないですが、色々と選択肢を挙げてみて思考を巡らせることはとても臨床において重要だと思います。あなたはこのブログを読むようなマニアックな方でしょうから、きっとこの記事からきっとヒントを得られるはずです。
他の記事もそうですが、ほねゆきのブログをなかなか話が進まないなーなんて思って見ている方は、理解力の高い方だなと思います。しかし、いちいち細かく話してくれる人が今の環境(職場・学校)にいない人にとっては【考える場】として当ブログは最適だと思いますので、「早くどうなったのか書けよ〜」と思っている人も少しゆっくり読んでみることをお勧めします。(笑)
重苦しい内容にならないように、タイトルや小見出しは少々ふざけておりますので、そちらも見どころとなっております。(笑)
そして是非、ツイートでもリツイートでもスクショでもいいので、このブログを良い意味でも悪い意味でも拡散していただけると嬉しいです。では、今日の記事どーぞ!!!
ボールが来るところに構えるんじゃない。構えているとこにボールを来させるんだ!
ほんの数日前に午前中の施術を終えて昼休憩に入り、最近流行っているインスタとチックトックとはなんぞやと調べようとしていた時にピンポーンと院のチャイムが鳴りました。先日購入した高性能ハンディカムがついに届いたか!と思い玄関を出ると、60代くらいの女性が左頭頂部を押さえて立っていました。
「すぐさっきに家の庭で洗濯物を干していたら石っころにつまづいてブロック塀に頭を打撲したんです。ケガなので見てもらえませんか?」
近所にお住まいようでしたが、ほねゆきのところには初めてみえた方でした。昼休みの時間でしたが、すぐに状態を確認することにしました。このように頭を打ったと言ってほねゆきのところに患者さんが来た場合には、施術所としては次のような対応パターンが考えられるでしょう。
A:来院扱いにせず、あえて話も深く聞かずに専門医受診を勧める。
B:来院扱いにはしないが、施術対象のものかどうか見極めて対応を考える。
C:来院扱いとして初検料を算定することを前提に、施術対象のものかどうか見極めて対応を考える。
パターンAは、患者さんに関わらずに門前払いするということです。これは、決して非難されるような行動ではないとほねゆきは考えます。せっかく頼って来てくれた患者さんの話をロクに聞かずに他へ行くように伝えるということですから、もちろん対応の仕方によっては悪者のように映るでしょう。
しかし、もし仮に頭部外傷について全く知識がなければ適切な対応が出来ずにただ時間だけが過ぎてしまうということも考えられますから、分からなければ触らないという選択肢はしっかりと自分の中で持っていなければいけません。
もちろん、「わからないので他へ行ってください。(扉ピシャリ)」ではなくて、「近所に〜時から診療してる〇〇脳神経外科があります。」とか「この時間はどこの外来も閉まっているから△△市の救急ホットラインにかけてみてください。」などといった対応は必要です。
今回ほねゆきは、患者さんが意識清明でしっかりと立ち、話せていたため数分を争う事態ではないと思い、ある程度適切な対応ができると判断したのでパターンAは選択しませんでした。
パターンBとCの違いは初検料を算定するかしないかです。病院で言う受診扱いにするかしないか。接骨院では施術の範囲外だと判断したものは無病(無傷)として初検料のみ算定することができます。
ほねゆきには、基本的にパターンBの選択肢はありません。患者さんの話しをしっかり聞いた上で状態を判断し対応するということは、それなりに責任を負うということなので、来院扱いにせず他に回すのであれば、ハナからパターンAを選ぶべきだと考えるからです。
パターンBを選ぶときというのは、患者さんにそもそも支払能力がないときや、クレーマーまがいの患者さんでトラブルになりそうな時です。まぁそういった雰囲気があるならば最初からみないので、実質パターンBの選択肢はないということです。
今回は、パターンCを選択しました。これは〈頭を打って診てほしいときた患者さんを院内に入れて、対応しました。〉というただそれだけの話なんですが、実際に施術所を運営するとそんなことも考えてるのかと、学生さんや雇用されている先生たちにはビックリするような話のようです。(研修に来ていた学生さんに話すとポカンとされます。笑)
ボールがいつ来てもいいように、このブログを読んでラケット捌きを磨いておきましょう。さて、本題に戻ります。
掘らねばでぬでぬ、情報や
患者さんの負傷原因は転倒によるものです。今回は患者さんが自らエピソードとして「ブロック塀に頭を打った」と言っていましたが、患者さんが言っていなくても転倒したと言っている場合は必ず、頭部を打っていないか確認することが必要です。
また、ひとくちに「転倒した」といってもよろけた程度なのか、完全にすっ転んで横になる状態までになってしまったのか、患者さんはそこまで言葉を細かく使い分けないので問診の際は注意が必要です。今回は、自宅敷地内の転んだ方向には夏の台風で崩れかけているブロック塀があり、その角にぶつけてしまったと言います。
患者さんは、「頭は軽くぶつけた程度」だと言いながらも、来院からずっと左頭頂部を手で押さえており、さらには「転んでから両側頭部に頭痛がする」との訴えがありました。患部に出血はなかったものの、頭髪には砂利のような汚れが付着し、頭頂部から左側頭部にかけて圧痛がありました。直径3センチほどの皮下血腫もプクプクと触れており、これらは患者さんが自覚していなかった症状です。
両側頭部が時々痛むことをはじめ、左側頭部の圧痛は、問診や触診を重ねていくことで得られた情報です。
頭部の打撲は痛みが著明であれば患者さんが自発的に訴えてくれますが、痛みを伴わなかったり、他の打撲部の痛みが著明な場合は訴え忘れていることが多いです。
しかし、頭部以外の打撲より、むしろ症状が軽微でも頭部打撲の方が重篤な結果を招きかねません。症状が強い方だけみていてもダメだということです。それだけに、負傷原因が転倒である場合は元より、交通外傷や墜落によるものでは必ず頭部外傷の有無をチェックする必要があるでしょう。頭部外傷があるからと言って全例において対診をする必要もないでしょうが、対診するのに越したことはありません。
今回の患者さんのように、打撲部とは反対側の側頭部に疼痛を訴えるのは高齢者に比較的多く見られる症状です。これは、頭部を支える頸部の筋力が弱いために起こるようです。
みるみると診ていく
ほねゆきが行う頭部外傷に対する判断のポイントをご紹介しましょう。基本的には学校で習ったことと同じです。と言われるとちょっとドキッとしますよね。(笑)
JCSやGCSを先にさっと取ってしまっても良いかもしれません。しかし、接骨院に2桁や3桁の患者さんが来ることは稀でしょう。教科書的なブラックアイ現象やバトル兆候なども明らかなので、すぐに対診ですね。
①受傷時の詳細を聞く(本人の話だけでなく目撃者も含めた詳細な経緯)
②受傷前後の記憶を確認(意識消失や健忘の有無)
③嘔吐(気分が悪くないか)と呼吸障害
④頭部の自発痛の程度をみる(部位、強さ、出現パターン、時間推移)
⑤神経学的所見
⑥他の外傷がないか確認
①受傷時の詳細を聞く
付き添いに家族がいれば、家族に聞くと良いでしょう。受傷後に、おかしな言動をするようになっていないか尋ねます。また、付き添いがいない場合は患者さん本人に受傷時の様子をはじめ、昔の話、ここ数か月前の話、ここ数日前の話、来院当日の朝から今までの生活状況について聞くなどし、言動に不自然さがないか確認します。
受傷外力の程度はしっかりと聴取しなければなりません。純粋に高エネルギー外傷であれば重篤な外傷となりやすいですし、小さな外力であっても何にぶつかったか(物の硬さやスピード)で結果が変わってきます。また、転倒したといってもそれが急な意識消失で転倒した(てんかん、脳血管障害など)のか、単純に物につまずいて転倒した(不注意、パーキンソン病などの基礎疾患)のか、下肢の急な脱力(下肢の外傷、脳腫瘍などの疾患)が起きて転倒してしまったのかなどによって疑ってかかるものが変わってきます。頭部外傷に先発して何か病変が隠れているかもしれないということです。
②受傷前後の記憶を確認(意識消失や健忘の有無)
交通外傷(自転車などによる転倒を含む)では逆行性健忘症となっていることもあり、その場合は相当な外力が頭部に働いていることが多いようです。脳震盪なのか、軽微な軸索損傷なのかなど、病状を細かく特定する必要はありません。もちろん推測することは必須ですが、対診するに際して最低限の情報取得とトリアージが必要です。
③嘔吐(気分が悪くないかどうか)と呼吸障害
嘔吐している(嘔吐しそうな)場合には、呼吸がしっかりできているかを確認することも大切です。接骨院で問診できているくらいですから、外傷により即時呼吸障害が起きているような場合はないと思います。しかし、患者さんは転倒して頭が痛く、嘔吐してしまったなどという状態に陥るとパニックになっている場合が多いです。呼吸性アシドーシスの状態になるなどは少なくありません。声かけや回復体位を取らせるなど、対応はできるでしょう。
④頭部の自発痛の程度をみる(部位、強さ、出現パターン、時間推移)
多くの場合では持続的な軽度の頭痛だそうですが、急激な増悪などがある場合はすぐに専門医を受診するように伝えることも重要ではないでしょうか。
⑤神経学的所見
指鼻指試験で同時に眼球の動きを観察します。眼球が振戦している傾向があれば速やかに医療機関に紹介すべきです。上転障害などで頭蓋骨骨折などもチェックしましょう。接骨院に来るような患者さんは、同時に他の部位に外傷があることが多いのでそれに配慮しながら、バレー兆候(両上肢を前方挙上してキープできるかみる)や深部感覚テスト(目を瞑って気をつけ姿勢で静止できるかどうかみる)などを使い分けるのも良いでしょう。両手を交差して握らせて握力を確認するテストはすぐにできますね。
⑥他の外傷がないか確認
これはもう、あるあるなんですが、頭部外傷に気を取られて橈骨頭骨折を見逃していたとか、指骨骨折を見落としたとか、膝蓋骨不全骨折があったとか、よく聞く話です。しっかりと全身を確認しましょう。
結局どうなったん
今回の患者さんは、①~⑥のいずれにも対診を考える所見が見受けられませんでした。念のため患者さんには、頭痛が増してきた場合はもちろん、受傷から2、3週間の間に家族の人から不自然な言動を指摘された場合は速やかに医療機関を受診するように伝えました。
また、今見る限りでは大丈夫なように思えるものの、ご心配であれば医療機関に対して紹介する旨を伝えました。
柔道整復師にとって頭部外傷は、思いのほか見落としがちです。とは言え、必要に応じて頭部外傷について速やかに医療機関の受診を促す義務があるとほねゆきは思います。
ラグビーやアメフトなどコンタクトスポーツをみられている現場トレーナーの先生方は、また違った対応マニュアルのようなものが絶対にあるでしょうから、そういったことについても勉強していこうと思っています。コメント等で是非教えてください!
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