グルトの骨癒合日数の弊害

グルトさんの画像

皆さんは、学生時代に習ったグルトの骨癒合日数を覚えていますでしょうか。単語としては柔整師なら必ず知っているでしょう。国試の必修問題で出るので、語呂合わせで覚えた人も多いのではないでしょうか。コーレスさんとか、グルトさんは柔整師に有名ですね。

整形外科の先生方は皆さん知っているような有名なものなんでしょうか?こんなに大事そうにグルトの骨癒合日数を取り上げるのは柔整だけでしょうか?知っている人いたら教えてください。確か、標準整形外科学(医学書院)には載ってますね。

今回はその「グルトの骨癒合日数」について、臨床の現場でどう使われているのかをお話ししたいと思います。

今回もほねゆきのこれまでの経験を元にお話ししますので、「いや、私のところはこうだよ」などの意見はどしどし募集しています!

 

目次


  • グルトの骨癒合とは
  • どのような目的で作られたのか
  • 臨床でどのように使われているのか
  • 続く?!

グルトの骨癒合日数とは?

グルトの骨癒合日数は「グルトの」と言うくらいですから、グルトさんが発表したものです。

グルトさんが知られているのは名前と骨癒合日数だけで、それではあまりにもグルトさんがお気の毒なので、今日のブログのサムネイルがではグルトさんです。素顔を紹介させて頂きありがとうございます。

グルトさんの本名はエルンスト ユリウス グルト(Ernst Julius Gurlt)というそうです。ベルリンに生まれたドイツの外科医で、19世紀に生きた人です。

引用:Wikipedia

このグルトさんが骨の種類別の癒合にかかる日数を発表しました….のだと思われます。というのも、ほねゆきはこの骨癒合日数の情報の出典を見たことがありません。柔整の教科書にも出典はのっておらず、もはやどこからの情報か分かりません。(笑)

知っている方がいらしたら、本当に教えてください。教科書委員会の先生らに聞いても「分からない」と言うのです。そんなものを教科書に載せていいのでしょうか…

まぁそれは置いておいて、グルトの骨癒合日数の復習です。

中手骨 ―――――― 2週間
肋骨 ――――――― 3週間
鎖骨 ――――――― 4週間
橈骨・尺骨 ―――― 5週間
腓骨 ――――――― 5週間
上腕骨骨幹部 ――― 6週間
脛骨 ――――――― 7週間
下腿両骨 ――――― 8週間
大腿骨骨幹部 ――― 8週間
大腿骨頸部 ―――― 12週間

柔道整復学・理論編 改訂第6版 p43 より引用

上記の表に違和感を覚えた人はいるでしょうか。そんな人は記憶力最強の称号をあげます。ほねゆきが昔に教えていた内容は今とちょっと違うのです。違和感を覚えた人は、その違いを感じたのでしょうか。昔の表を見てみましょう。

(昔のグルトの骨癒合日数,太字が変更点)

指骨 ――――――― 2週間
中手骨 ―――――― 3週間
肋骨 ――――――― 3週間
鎖骨 ――――――― 4週間
橈骨・尺骨 ―――― 5週間
腓骨 ――――――― 5週間
上腕骨 ―――――― 6週間
脛骨 ――――――― 7週間
下腿両骨 ――――― 8週間
大腿骨 ―――――― 10週間
大腿骨頸部 ―――― 12週間

柔道整復学・理論編 改訂第1版 p41 より引用

見比べてみてください。また、なぜ変更になったかもほねゆきは知りません。(笑)おそらく、研究が進んだことによって辻褄(つじつま)が合わなくなったのでしょう。誰かが出版社及び教科書作成委員会に進言したのだと思います。

柔道整復学・理論編 改訂第6版にはこのように記載があります。

骨折した骨がどの時点で癒合したかは確定できるものではなく、ここでいう骨癒合日数は単に骨が硬化する日数である仮骨硬化期までのことであり、機能回復にはさらに多くの日数を必要とする。

柔道整復学・理論編 改訂第6版 p43 より引用

これはとても大事ですね。

つくられた目的は?

では、なんの目的でこのような発表がされたのでしょうか。結論から言うと、分かりません。正確に言うと、知りません。

もう昔の話になりますが、ほねゆきの教員時代の大先輩の先生に「これは何を目的に作られたんですか?固定期間の目安を作ろうとしたんですか?」と聞いたら、「固定期間の目安もあるけど、元々はただ単に統計を取って発表しただけだと思うよ。それを柔整が骨癒合の目安として使ってるだけだと思う。」との回答を頂いたことがあります。

もちろん、グルトさんの時代は今ほどは観血的療法は盛んでなかった思われますので、骨折患者さんの骨癒合時点での経過日数の統計を取り、データとして発表したのだと思います。

これも、知っている人がいたら教えてください〜。(人頼みなブログです。)

臨床でどのように使われているか

さて、グルトの骨癒合日数は臨床の現場においてどのように使われているのでしょうか。

ほねゆきのこれまでの経験で言うと、ほぼ使われていません。ほねゆきが知っている中では、これまでに実際に骨癒合日数を使って患者さんへの説明や固定変更を行なっていたのは一人だけです。

ほねゆき自身もあくまでも患部の状態を見て判断するので、個別性が非常に大きいと思い、グルトの骨癒合日数に照らし合わせて施術を決定することはありません。

実際に使っている方がいらっしゃいましたら、その使い方を是非ご教授ください!

グルトの骨癒合日数の弊害

先日の話なのですが、橈骨遠位端骨折でほねゆきの院に通っている患者さん(当時受傷から3ヶ月でしかも通院中)の保険者から患者さんに受診照会がきました。通院開始3ヶ月で来るなんてと思いつつ患者さんと会話していました。

受診照会とは、保険者が患者さんに対して「ほんとに正しく接骨院にかかっていますか〜?事実と違う事項はないですか〜?」と暗に聞いてくるいやらしい制度です。

もちろん、通院施術に関して事実と違うことはないので患者さんはそのままの内容を書いて送り返したそうです。

それから数日経ってから、ほねゆきの接骨院に1本の電話が保険者からかかってきました。

 

….というところで今日はここまで。長くなりそうなので、次回のブログをご期待ください。一体どこでグルトの骨癒合日数がでてくるのか!!!