接骨院を開業するということ

悪色髭の技

みなさん日々の臨床、お疲れ様です。

なんと,12月に入ってまいりました。

寒い冬はあまり運動器外傷の治療にとっては有利なものではないですから、もう早く春が来ないかなと思っています。

さて、今日は”接骨院の開業”についての話をしようと思います。

みなさんは、自分で何か事業を起こしたことはあるでしょうか。

今回は起業の中でも、「柔道整復施術所の開業」について私の考えや経験をベースにを語りたいと思います。

私は個人での接骨院開業については賛成派でも反対派でもありませんが、やりたい人は応援したいと思う派です。

※この記事では〈個人での柔道整復師の施術所の開設および運営〉のことを、わかりやすく〈接骨院の開業〉と表記します。

多くの人にとっての「開業」とは

なんで皆さん、開業するんでしょうね。

柔整師には、漠然と「下積み→開業」という人生設計をしている人が多いと思います。

開業する理由はなんでしょうか。

  • お金を稼げるから
  • 時間的余裕が欲しいから
  • 自分の名前を売っていきたい
  • 自分の思い通りにしたい

挙げればキリがないですが、よく言われるのはこんなとこでしょう。

しかし、私がこれまで数多くの人から開業相談を受けてきて一番多い「開業する理由」は以下です。

〈なんとなく〉

このなんとなくは、相談者によって以下のように言語化されます。

  • 〇〇歳になったから
  • 〇〇年勤務したから
  • そろそろだと思ったから
  • 周りが開業したから

まぁプランも何もない場合が多いのですが、これは皆さんどう思いますか?

開業する理由

私はそういう〈なんとなく〉での開業は悪くないと思います。

もちろん「これだ!!」っていうストーリーがあればいいですが、ないので仕方がないんです。

これを自分に嘘をついて、「地域の患者様を笑顔にしたい」とか「自分ひとりでもやっていける技術力がついたから」とか謳おうもんなら、最悪だと思います。

開業するきっかけはなんでもいいというのが自論です。

人生、やりたいと思ったらなんでもやればいいと思いますよ。

  • 30歳だし開業するか
  • 10年も勤務したし開業するか
  • 家族にためにいっちょ稼ぐか
  • 親の接骨院継ぐか

などなど、なんでもいいと思いますし、これを批判する人はちょっとナンセンスだと思いますね。

私からすれば、現状を脱却というか変えようとしているだけで十分なんか考えてますからね。

では、私が「みんな考えずになんとなく開業しろー」って言うかっていうと、これは違います。

開業の最低条件

「柔道整復師免許を持つ」とか「テナントがある」、「開業資金がある」、「健康である」とかは接骨院開業のための必要十分条件ですが、私は開業に際して、最低条件を設定するべきだと思います。

先ほど言ったように、動機やきっかけはなんでもいいのですが、〈思いついたら即行動〉ではなくて、一度私のおすすめする〈最低条件〉を考えて欲しいんです。

〈接骨院開業の最低条件〉
・患者をある程度コントロールできること
・患者の選定をある程度できること
・できないことをそのままにしないこと

とまぁ文字にするとこんな当たり前のことなんですが、意外とできていない人が多いです。

患者をコントロール

相手に何かを伝えるということができなければ、開業しても生きていけません。

患者さんを治したい、スタッフを入れたい、外注をしたい、外勤したい、などなど。

全部、相手に熱量と文脈を伝えて相手をコントロールすることが必要です。

例えば、指の骨折が来たとして、あなたは「医師の同意」の問題をミスリードなく患者に伝えて、患者に行動を正しく起こさせることができるでしょうか。

例えば、固定した患者さんに固定を何週間も守らせることができるでしょうか。

例えば、患者に意義を伝えた上でモチベーション高く毎日通院させることができるでしょうか。

全てコミュニケーションの問題であり、自己ブランディングの問題であり、行動変容の問題です。

このスキルをぜひ、手に入れましょう。

もちろん完璧はないので確度と粒度を高めることが重要です。

患者の選定

患者は接骨院を選びますが、接骨院も患者を選びます。

接骨院という比較的閉鎖的な環境では、患者を選ばなければ大変なことになります。

例えば、スーパーマーケットはお客さんの出入りを基本的には制限していません。

会員制でないスーパーの入り口で「ちょっとあなたは入らないでください」と言われることはないですよね。

だからレジでゴネるおじさんが発生するんですよね。

患者の選定という観点で、接骨院で一番重要なのは〈そもそも何もしない〉という選択肢を持つことです。

私の院は怪我をして色々なところを周ってから来る患者さんも多いのですが、よくある接骨院のダメなエピソードを箇条書きでご紹介しましょう。

以下は”患者さんが言った”これまでの経緯を箇条書きにしたものだと捉えてください。 

受傷

近隣の接骨院を受療
「折れてるかもしれないけど筋肉が痛んでる」と言われて電療と超音波を当ててマッサージをされ、少し痛みが減る。
帰宅してしばらくすると疼痛増強。

翌日、近隣整形外科受診
「骨折してる。接骨院が骨折を見逃して治療器当てるなんて何事だ。症状が悪化したと接骨院を訴えた方がいい。」

ねぇ…….このエピソードを聞いてどう思いますか?

この後、そこの整形外科に通っても良くならないと言って私のところにくるというオチは一旦置いておいて、この接骨院の柔整師はまさに〈わからないのに患部に手を出している状態〉ですよね。

だから、整形外科医は柔整師を嫌がるんですよ。

なんとも恐ろしい状況だと思います。わからない場合はみてはいけないのです。

院内で暴れるような患者をみてはいけない、お金を払わない患者をみてはいけない、いうことを聞かない患者をみてはいけない、のと同じように自分が判断できていないのにとりあえず物療だけやろうなんてしちゃいけないんです。

それが患者の選定の意味です。

あなたの実力から患者を選定しなければいけません。

できないことをそのままにしない

これは先ほどの話にもつながるのですが、やはり連続した学習がなければ独立開業してはいけないと思います。

というより、継続して運営していけないと思います。

これも例を出して説明しましょう。

これはとある開業している先生から私が相談を受けた時のひとことです。

「先生、また骨折の同意をもらいに整形外科に行った患者さんが帰ってきませんでした。」

これは、自分の接骨院に骨折の患者さんが来て、応急処置をしたのちに骨折治療の同意をもらいに近くの整形外科に患者さんが行ったが、何かしらの理由で、そのまま接骨院には戻らず通院がなかったという意味です。

ここで注目してほしいのが、「また」という部分です。

そう、この先生は私に同様の相談を既にもうこの時点で2回もしているのです。

同じことを3回も聞いてきたこの先生に対して私はどう答えようか迷いましたが、こう言いました。

「んー、もう諦めたら?」

私は「(接骨院の運営を自分でやるのを)もう諦めたら?」と言いましたが、その先生はどうやら「(その整形外科に患者さんを送るのを)もう諦めたら?」と受け取ってくれたようで、

元気に「そーっすよね!」と言っていました。

何かをやってみてダメだった、もしくはダメな兆候が出ている、もしくはダメになりそうだと教えてもらった場合には、必ず修正をかけなければいけないんです。

整復固定も同じです。

これを、「またダメだったなぁー」で終わらせたり、「ダメだったのはなんでだったか聞いてみたけど、まぁいっかー」で終わってみたりするのは、いつしか事故が起きたり、患者がいなくなるのでやめましょう。

という、ちょっと抽象的なんですけど、この3つが開業もしくは継続運営の最低条件かなと思います。

いつ条件を満たすのか

では、この最低条件を満たさなければ接骨院を開設してはいけないのでしょうか。

結論、そうです。

しかし、これらの条件を満足にすることは人生においてないと思っています。

かくいう私も、まだまだ患者さんへの伝え方が不十分だったなと思うことがあるし、この選択は間違ってたなと思うことがあるし、調べなきゃなーと思ってそのままにしていることもあります。

だから、どんなにレベルの高い先生もこの最低条件を満たすことはないと思うんですが、常にこれらを目指して運営しないとダメだと思うんですよね。

結論

長々とタイピングしたのですが、結局言いたことはこれです。

〈死ぬな事故るな諦めんな〉

常に自分を疑って、とにかく事故をないように物事を進めるべきです。

つまり接骨院の開業は、勝手にしていいけど生き残りたけりゃリスク踏むなってことです。

皆さんは、どうお考えでしょうか!