I先生のTweet – ②結局、先輩の話はどうなの?

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前回の記事の続きとなります。前回の記事をまだ読んでいない方は、まず①上腕骨近位端骨折後に上腕骨頭が亜脱臼する?を読んでください。きっと面白い話が聞けると思います。

前回の復習ですが、I先生がこんなTweetをして、さらにそれには続きがありました。

https://twitter.com/js_inoue/status/1491983341872369675?s=20&t=lxTU6MsUeVDLtNS4BAJ2BA
こちらのTweetは①でご紹介しました。
今回取り上げるTweetです!

なかなか興味深い内容ですよね!すぐに深掘りしましょう!

①上腕骨近位端骨折後に上腕骨頭が亜脱臼する?
②結局、先輩の話はどうなの?(この記事です⬅︎)

今回の記事の目次は以下のとおりです。いつも長ったらしくなるので、簡潔にいきたいと思います!


  • I先生のTweetの要約(後半部分)
  • ほねゆきの思う「亜脱臼」と「下垂」
  • 先輩の話
  • 亜脱臼を放っておいていい?
  • 亜脱臼が骨頭の転位をつくる?
  • さいごに

I先生のTweetの要約(後半部分)

I先生のTweet(2Tweet目以降)に書いてあることを箇条書きにすると、

  • 先輩方曰く「骨頭の下方への亜脱臼は自然に戻る。亜脱臼を戻そうと上腕骨を突き上げると、むしろ骨頭が転位してしまう。」
  • 先輩の話の中には、「亜脱臼を放っておいていい理由」がない
  • 亜脱臼を放置しておくと、骨頭が求心性を失っているため骨頭が転位する印象がある
  • 亜脱臼した骨頭をコントロールするにはどうすればいい?

しっかり、見ていきましょう!

ほねゆきの思う「亜脱臼」と「下垂」

①上腕骨近位端骨折後に骨頭が亜脱臼する?の記事の最後でも少しお話ししましたが、ほねゆきはこれらの単語を使い分けるべきだと思っています。もちろん、言葉の問題なので脳内で区分けができていればどっちの言葉を使っても構いません。

ほねゆきは亜脱臼ひいては脱臼というと、どうしても「傷病である状態」を連想してしまいます。対して、骨頭の下垂とだけ言うと「単に骨頭が下垂している状態」しか指しません。

ほねゆきの中では、今回の「上腕骨近位端骨折後の骨頭の動き」は「骨頭の下垂」と表現した方がしっくりきます。なぜなら、骨頭の下垂自体は異常な状態ではなく、回復指標 のひとつだからです。

「関節内に血腫が貯留したり肩周囲の筋緊張が落ちると骨頭が下垂する」現象は「擦り剥いたら血が出る」、「運動したら汗をかく」などと同じように、上腕骨近位端骨折という原因による結果の一つにすぎないのです。

何を言ってるんだと思われるかもしれませんが、ほねゆきはこういう物事の捉え方が非常に大事だと思っていて、今回ここで言いたいのは「骨頭の下垂が異常な状態である」という認識は要らないということです。

では、なぜ要らないのか。Tweet内の先輩方の話から振り返ってみましょう。

今回の記事はほねゆきの考えを発表しているに過ぎず、論文で発表されているのかというと、そう言うわけではありません。論文化されていることだけが正解でもありませんが。重ねてお伝えしますが、特定の先生の考えを否定するものでは全くありませんのでしっかりー解ください。

先輩方の話

先輩方の話はこうです。「放っておいて問題ない。自然に戻る。むしろ亜脱臼を戻そうと下手にデゾー包帯で上腕長軸に軸圧を加えると骨頭が回転してしまう。」この話のポイントは2つでしょう。

1)骨頭の下垂は自然と戻るから放っておいていい
2)骨頭の位置を戻す(=下垂しているので上方に押し戻す)ために上腕長軸方向に突き上げると骨頭が回転転位してしまう

もし、ほねゆきが同じことを後輩に聞かれたらこのような言い回しは避けるとおもいますが、基本的な考えは同じです。

I先生が言うようにこの先輩方の話には少し理由が足りませんね。回転転位をしてしまうとありますから、以下では不安定型の上腕骨近位端骨折を想定としてお話ししますね。

亜脱臼を放っておいていい?

結論から言うと、骨頭の下垂は放っておいてはいけません。しかし、多くの症例では骨頭が下垂しているからといって固定や手技などで外的にそれを戻そうとしてはいけません。

矛盾しているでしょうか。いいえ、していません。解説します。

①上腕骨近位端骨折後に骨頭が亜脱臼する?の記事で骨頭が下垂する理由として 1)関節内血腫の貯留 2)筋緊張の低下 があるとお伝えしました。

つまり、これらの理由がなくならなければ骨頭の下垂は元に戻りません。

もちろん、肩甲帯から吊り下がっているだけの上腕骨頭の吊り下げ力が一時的に弱まっているだけの状態なので、骨折部をうまく保持しながら患者を寝かせることができれば、骨折部をズラさずに骨頭の下垂を戻すことはできます。

ほねゆきも経験がありますが、骨頭が下垂している患者さんのレントゲンを仰臥で撮影すれば骨頭はあまり下垂して見えないはずです。

しかし、患者さんを寝たきりにすることはできませんし、それに意味はありません。

読者の声

じゃあ、どうすればいい?放っておいてはいけないってどういうこと?

関節内血腫の貯留や筋緊張の低下に対しては、施術や管理が必要だということです。それらの要素がなくなることで、結果的に骨頭の位置が戻ります。骨頭の位置を戻すことが施術の主眼にはなりません。(言い回しが難しいでしょうか?)

つまり、何もせず放っておいては血腫も引きが悪いし筋力も回復しないので、元の腕には戻らないからそれらに対しての施術が必要。そうやって施術していると結果的に骨頭が正常位置に戻る。

吊り下げ力が戻っていないままだと、重力がはたらいたら、骨頭を外部から押し戻しても、再度骨頭が下垂するので意味がないということです。

骨頭を上方へ戻そうとすると骨折部に力が加わり、転位します。

では、骨頭が下垂していると何か問題があるのでしょうか。

亜脱臼が骨頭の転位をつくる?

①上腕骨近位端骨折後に骨頭が亜脱臼する?の記事でご紹介したように、骨頭が下垂していても、それによる疼痛はありません。なんならCodman体操を行なっても全然平気です。

Codman体操についてはまた別の記事でご紹介します。骨頭が下垂していてもCodman体操を行える(肩甲上腕関節が動く)理由についても同様です。

では、I先生が指摘するように骨頭が下垂していると(=骨頭が関節窩に対する球心性を失っていると)骨頭が動く(転位する)のか。

結論から言うと、骨頭が下垂していることでは動きません。しかし、他の要素で動きます。どういうことか分かりますでしょうか。

全ての条件を書くのは難しいので、骨頭が転位する理由をいくつか紹介します。それぞれの解説について書いていると10話くらいになりそうなので、ここでは書きません。

骨頭が転位する理由

1)腱板(Rotator cuff)の収縮
2)三角筋・大胸筋などのアウター筋の収縮
3)固定による上腕長軸方向への突き上げ外力(先輩方の話にありました)
4)施術の際の不用意な外力
5)患者さんの転倒などのトラブル  などなど

上記の理由は骨頭が下垂していなくても、骨頭の転位につながります。

では、骨頭が下垂した状態と骨頭が正常位置にある状態とでは、上記のような力が働いた時に違いがあるのでしょうか。

これは、そういった研究がないため、「どちらの条件でも同じ」とは公のブログでは言いませんが、ほねゆきの中では「骨頂が下がっているからといって上記作用が強く働きやすく、骨頭が不安定とは言えない」と結論付いてます。

ここでI先生は色々と思考を巡らせていると思われますが、明確に答えはこうだ!と言えずに申し訳ありません。

骨頭が下垂した状態と正常位置にいる状態とでは、大きな違いは「関節窩関節面に接触しているかしていないか」「腱板の緊張があるかないか」でしょうか。

骨折していない健康な人において肩関節運動の際に骨頭はよく回ります。つまり、骨頭が正常位置にいる状態において、上記2つの理由が骨頭の回転を止める強い要素になっているかと言われると、ほねゆきは止める要素にはなっていないと考えます。

よって、正常位置にいる状態に比べて骨頭が下垂した状態では、上記理由の力が加わった際に骨頭が転位しやすいとは言えないのではないかと考えます。

骨頭の位置は上か下かで変わっていますが、腱板に吊り下げられているという条件は同じなので、関節窩に対して下にいるからといって骨頭が不安定になっているとは言えません。

骨頭は関節窩に適合していても動くものですから、骨頭を制御する(動かす)という発想よりも、動かさなければ(軸圧がかからなければ)回転しないので、整復がきまれば、いかに転位させる外力を加えさせないかという発想が大事です。

さいごに

色々と偉そうに御託を並べましたが、ほねゆきが上腕骨近位端骨折を施術する際は以上のようなことを考えています。

実際にどうやって転位に気をつけながら血腫を引かせたり、筋力を上げたりするのかは、また別の記事で解説しますが、導入の基本的な考え方が一番大切なので、ほねゆきの脳内を一部シェアいたしました。.

ひとことでまとめると、「上腕骨近位端骨折後の骨頭の下垂は施術や回復の目安になる現象ではあるが、施術対象にはならない。」といったところでしょうか。

最後まで読んでいただきありがとうございました。重ねて、今回Tweetの引用許可をいただいたI先生(井上尚哉@急性外傷が大嫌いな人には無縁のコンテンツ内容を発信中)にはお礼申し上げます。