I先生のTweet – ①上腕骨近位端骨折後に骨頭が亜脱臼する?

人が議論する画像

Twitterまじでいろんな人いるよなぁ〜。特に柔整師はみんな本当に勉強してて、発信力もあるし面白い。。。ん、なんだこれ?

先日、昼寝をしようとした時にこのようなTweetを見つけてしまいました。以下、I先生(井上尚哉@急性外傷が大嫌いな人には無縁のコンテンツ内容を発信中)さんのTweetの引用です。

ほねゆきもこのTweetを読んでなるほどと思いましたので、記事にさせていただきます!!臨床力のあるI先生の思慮深いTweetを引用するとは….これは長くなりそうな予感…(笑)

ということで、今回は2つの記事に分けたいと思います。

①上腕骨近位端骨折後に上腕骨頭が亜脱臼する?(この記事です⬅︎)
②結局、先輩の話はどうなの?

今回の記事の目次は以下のとおりです。


  • I先生のTweetの要約
  • ほねゆきの経験
  • 上腕骨近位端骨折後に骨頭が亜脱臼する理由
  • さいごに

I先生のTweet要約

I先生のTweetに書いてあることを箇条書きにすると、

  • 上腕骨近位端骨折後に上腕骨頭の下方への亜脱臼をきたす症例がある
  • MRI検査にて骨頭の亜脱臼は関節内血腫の貯留が原因であった

ということでしょうか。非常に興味深い内容ですね!!ほねゆきも同様の症例を経験したことがあります。いや、上腕骨近位端骨折では骨頭の下垂は大小あれど必発するとさえ思っています。

まず、ほねゆきのが経験した実際の症例を見ていきましょう。

ほねゆきの経験

まずはこれをみてください。これは過去にほねゆきが管理した上腕骨外科頸骨折(50歳,男性,やせ体型)の受傷後(整復固定後)2週3日時点でのレントゲンシェーマです。

骨折線はわかりづらいですが、まるで教科書のルースショルダーのように上腕骨頭が下方へ亜脱臼しています。この症例は “亜” と言っていいのか迷うほどに骨頭が下がっていますね。

肩甲骨関節窩を並行にし、頭部から下肢側方向へ20°傾けてx線を照射して撮影する肩関節正面像です。肩峰下の空間をはっきり見ることができる一般的な撮影法です。

この方は比較的年齢も若く、転位も軽度(Neer分類,2part-a)であったため整復後は三角巾を帯状にして前腕遠位部で提肘し、体幹バンド固定としました。

約1日おきに来院してもらっていましたが、整復固定後1週3日過ぎたあたりで触診にて骨頭がわずかに下がってきていることが確認でき、2週の時点で大体下がりきったなという印象でした。

レントゲン撮影をした2週3日時点では、すでに夜間時痛・安静時痛は消失しており、体幹バンドは外して三角巾のみの固定としていましたが、骨頭が下がっているからといって患者さんの症状に大きな変化はありません。

骨折部はだいぶ安定性がでてきていましたので、レントゲン撮影後にCodman体操を開始しました。このときも、肩甲上腕関節の動きはよく、しっかり痛みなく腕を振れていました。

そして、下記の画像は4週3日時点でのレントゲンです。

肩甲骨関節窩に対する上腕骨頭の位置に注目してください。

ほねゆきは亜脱臼に対してなにか特別に処置を施したわけではありませんが、骨頭の位置がだいぶ戻ってきました。Moloney’s arch(モロニー弓)はまだ揃っていませんが、8割型戻ったかなというところでしょうか。

とても分かりやすいのでツイート拝借しました。赤のカーブ線がモロニー弓です。正確には、肩甲上腕関節がしっかりと抜けている正面像で判断します。

そして8週のレントゲンです。この患者さんは転位が少ないこともあり、約3ヶ月で完治となりました。

モンロー弓が綺麗に描けます。

ほねゆきが考える骨頭が亜脱臼する理由

では、骨頭が亜脱臼する理由はなんなのでしょうか。ほねゆきの考える理由は以下のとおりです。

1)肩甲上腕関節の関節内血腫貯留

肩甲上腕関節の関節内が血腫で満たされて関節内陽圧になったときに、肩甲上腕関節の関節包は他の関節と比べて余裕があるため、血腫が関節窩から骨頭を押し出してしまうということです。

これはI先生のツイート内にも「MRI検査で分かったが亜脱臼の原因は関節内血腫貯留である」とありましたが、上記のような機序を言っているのだと思います。ほねゆきは上腕骨近位端骨折後に骨頭が下がった症例において、その時期のMRI像を見たことがありません。多くの場合は初診時のまだ骨頭が正常な位置にいる時にCTやMRIを撮影しますので、臨床現場でリアルタイムに血腫貯留をMRI画像で確認できたというのは羨(うらや)ましい限りです。

さて、ここで重要なのは、関節内血腫は関節内に出血が及ばなければ起こり得ないということです。解剖学書を取り出して肩関節のページをめくってみてください。教科書にでてくるような骨頭に骨片を伴わない外科頸骨折は関節内の骨折でしょうか?

ほねゆきは関節内に骨折線が及ばない場合にも、骨頭が下がる症例をいくつも経験しています。それはなぜか。2つ目の理由です。

2)肩関節周囲筋の筋緊張の低下

上腕骨は骨性には肩甲帯に留まっておらず、筋によって吊り下げらるような構造になっています。その吊り下げの力が弱まったら、骨頭は必然的に下がるでしょう。

骨折などの比較的広範囲で強い損傷が起こった場合に、一時的にその周囲の筋緊張は明らかに低下します。

これはほねゆきの経験からしても間違いではありません。ほねゆきは理論的に体の中で何が起きているか説明することはできませんが、そういった類の文献がすでにでており、証明されているそうです。(現在勉強中ですが、組織損傷により神経筋接合部が切れて?筋収縮が出せなくなるようです)

他にもいくつか考えられますが、大きな理由は上記2つでしょう。理由なんてどうでもいいよーと言う人は、きっと外傷治療は向いてません。I先生のように疑問を施術に活かす意識がとっっても大事だとほねゆきは考えます!

さいごに

I先生をフォローしているひとは既にご存知だと思いますが、今回ご紹介させていただいたI先生のTweetには実は続きがあります。

https://twitter.com/js_inoue/status/1491983445060628483?s=20&t=lxTU6MsUeVDLtNS4BAJ2BA
な、なんと!

次回はこのTweetについても深掘りしていきますよ!!!!

最後に、今回のブログでほねゆきが「亜脱臼」「骨頭が下がる(下垂する)」の2つの表現を使っていることに気付いた方はいますでしょうか。もちろん、一般的には意味はほぼ同じなので今回は混ぜて使いました。

しかし、ほねゆきの中では少し意味合いが違うのです。ほねゆきは亜脱臼ひいては脱臼というと、どうしても「傷病である状態」を連想してしまいます。対して、骨頭の下垂とだけ言うと「単に骨頭が下垂している状態」しか指しません。

上腕骨近位端骨折後に骨頭が「亜脱臼」or「骨頭が下垂」。ここにモヤモヤを感じた方は、きっと次の②結局、先輩の話は本当なのかの記事でスッキリするでしょう。乞うご期待!

今回書いた内容は、あくまでもほねゆきが臨床経験によって得た知見をベースにしています。さまざまな考え方のひとつというふうに捉えていただけるとよろしいかと思います。また、今回はI先生やY先生のTweetを引用させていただきましたが、当ブログは引用元の先生のみならず他の先生を批判する目的は一切ないことを申し添えておきます。快くTweet引用の許可を下さった先生方には感謝しております。ありがとうございます。

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2件のコメント

今日もタメになる記事ありがとうございます。
私も以前肩関節の脱臼骨折(大結節)の患者さん(高齢女性)で経過の途中で上腕骨頭が下垂した経験があります。
整復後→三角巾とバストバンド
1w→大結節再転位のためギプス固定(肩外転外旋位)
2w→上腕骨下垂、シャーレ
3w→上腕骨は下垂したまま、シャーレ除去
4w→モロニー弓は揃わないが骨頭の位置が上方へ戻ってきている
6w→モロニー弓描ける位置まで骨頭は戻った
レントゲンだけですが、こういう経過をたどりました。
私も下垂する現象がわからなかったのでいつも教わっている先生に聞いたらカフのトーンが下がって一時的に下垂するけど戻ってくるから心配ないと教えていただき安心しました。
関節内血腫の話は初耳でした。

コメントありがとうございます。
体幹にギプスでしょうか。貴重な経験をされたこと羨ましく思います。
そのように教えてもらえる先生がいることはとても大事なことだと思います。
これからもブログをよろしくお願いします!

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