さて、いよいよ長くなりすぎて飽きてきたでしょうか。
臨床の現場をリアルに書いたら面白いなぁと思って書き始めたんですが、あれもこれもと書いていたら④まできてしまいましたm(_ _)m
さて、今回でこのお話は終結です。①整形外科編、②整骨院編、②-2解説まとめ編、③ほねゆきの接骨院編をまだ読まれていない方は先にそれらの記事をお読みください。
この記事で最後ですよ!!
では、いきましょう!
いざ紹介状
ほねゆきの書いた紹介状(施術情報提供書・ご紹介書)を文字起こししてみました。
※あくまでも対診先の先生との関係性があったうえでの文書(言葉の使い方)なので、そのまま写して実際に対診で使用するのは気をつけてください。
ご紹介書 令和4年○月○日
〇〇〇〇整形外科 〇〇先生御侍史
〇〇接骨院 ほねゆき
【患者情報】
氏名 〇〇 〇〇〇
生年月日 平成○年○月○日(14歳)
性別 男
【傷病名】
左脛骨内果骨挫傷疑い、左距骨内側骨挫傷疑い、左足関節外側靭帯断裂
【受傷年月日】
令和4年4月12日
【紹介目的】
平素より大変お世話になっております。骨折(不全骨折・骨挫傷)の疑いが強く認められましたので、貴院での精査及び当院での継続加療の同意を頂くためご紹介させていただきます。
【受傷原因】
令和4年3月15日 バスケ中にジャンプの着地で左足関節を内反し受傷しています。受傷日に他院を受診し、左足関節捻挫として2週間ギプスシャーレ固定及び松葉杖にて免荷されました。2週時点で靭帯の修復が進んでいないとの判断で、さらに2週間の固定延長を提案されておりました。そこで不安になった患者様がご自身の判断で次の院へ受診され、そこではサポーター固定に変更となったようです。そこから徐々に運動開始したようですが、4月8日にバスケで再度左足関節を内反へ捻り症状が増え、当院へ受療されました。
【症状】
受傷から4週間経過しておりますが、左足関節は著明に腫脹しております。特に外果周辺の腫脹はつよく、外側靭帯の圧痛は著明です。内側にも腫脹・圧痛があり、衝突性の骨挫傷を疑います。徒手の内反ストレステストにて足関節の動揺性は著明です。
【現病歴・既往歴】
約2年前(小学6年時)に左足関節捻挫の既往があり、その後は年に数回のペースで捻挫をするようになったそうです。今回の受傷以前から左足関節は不安定性を感じており、今回の損傷部位の回復後にも元々あった不安定感は残存する可能性があると思われます。
【施術の内容】
受傷から日数が経過してることもあり、固定処置はしておりません。疼痛にて歩行が困難なため、松葉杖にて完全免荷としてあります。貴院での精査後に、当院にてギプス固定する予定です。
【備考】
患者様は当院での継続加療を希望されております。ご指導・ご助言のほどよろしくお願いいたします。
こんな感じですね〜。ほぼそのまま載せました。
もちろんこれは文書での表現なので、嘘は書いてないですが堅い表現を使っており、参考にはならないと思いますが、面白いと思うので読んでみてください。
「なんでここまで書くんだろう」、「なんでそういう言い回しをするんだろう」、「なんでこのことは書かないんだろう」などと考えてみるといいかもしれません。
レントゲン
対診先でレントゲン室に入らせていただき、ほねゆきがポジショニングをしました。
足関節4方向(正面、側面、斜位、斜位)と距腿関節内反ストレス撮影1方向、健側は2方向(正面、側面)と距腿関節内反ストレス撮影1方向を撮影していただきました。
今回は対診先の先生と患者さんの同意をいただいた上で実際のレントゲンを少し加工(アノテーション削除、ぼかし絵加工)して掲載します。
全てのレントゲンを載せると大変ですので、3方向をピックアップしました。
さて、皆さんはこのレントゲンから何が読み取れるでしょうか。
まず、正面像と側面像の全体を見て明らかな骨片や変形、骨端線の不整がないかをチェックしましょう。
ほねゆきが見る限り、それらの異常はありません。
しかし、正面像と側面像でそれぞれ違和感を感じました。違和感とあえて言いましたが、はっきり言語化できる内容です。
なぜ違和感と言ったかというと、本来は健側と比較して計測(フィルムや画面上で角度や距離を測ること)しないとダメな内容だからです。しかし、ここでそれらをきっちり測っていると時間がないので省略したい・・・→「違和感」と書こう。といった具合です。m(_ _)m
さて、まず正面像において距腿関節裂隙の外側の幅が内側の幅に比べて広い(距骨が脛骨天蓋に対して内反方向にやや傾斜している)ようにほねゆきには見えます。
この正面像は特にストレスをかけていないのですが、通常の状態で距骨が既に傾いてしまっているということです。
次に、側面像を見ると距骨がわずかに脛骨に対して前方偏移しているように見えます。(側面像が綺麗に撮れていないのはお許しください。)
上記の2つの現象は、足関節外側靭帯断裂(主にATFL、CFL断裂)においてよく見られるサインです。
当たり前ですが、外側の支持機構が破綻すれば正面像で距骨は傾きますし、ATFLが断裂すれば距骨の前方制動の制御は効かなくなります。
これがストレスをかけない状態でもでているというのは、足関節外側靭帯断裂の支持機構が大きく破綻していることを意味します。
これをまず確認した上で、ストレス撮影をお願いしました。
【初心者のためのポイント】
実際にレントゲンを撮る際は、検査者は不要な被曝を避けるために鉛(なまり)の防護エプロンを来て撮影室に入ります。細かな患部の制御が必要なストレス撮影は、多くの場合で人の手によって行われますが、ストレス撮影(画像一番右)で画像の上下が切れているのは、x線の照射をそこに限って、検査者の手がなるべく被曝しないようにするためです。
ストレス撮影を見ると、これで患者さんも一目瞭然です。距骨傾斜角は測っていませんが、著明な傾きですね。
そして、このストレス画像を見ると、内果と距骨内側が衝突していることは容易に想像できるでしょう。
ほねゆきの接骨院へ戻り・・
そして、同意をいただきましたのでほねゆきの接骨院へ戻って処置を行いました。
整復後(足関節とリスフラン関節の固定肢位づくり後)に下腿〜足尖までグラスファイバーギプス固定を行いました。
ギプスを巻いた後に荷重させてみると、荷重時痛が足関節内側でありましたので松葉杖にて免荷としました。
その後、2週半で固定は全て除去しサポーター固定へ移行。トータル3ヶ月の通院で運動に完全復帰しました。
しかし、この子が運動するときは一生、サポーター装着をするように言わなければなりません。
紹介状にも書いたのですが、元々足関節に緩みを感じている、いわゆる靭帯が伸びた状態だからです。(実際には靭帯はそれほど伸長しませんが、ここでは部分断裂による部分的な癒合不全による関節動揺性の増加を指します)
今回の傷病に対してはなんとか持ち直しましたが、陳旧性の断裂に対しては外科的処置以外に介入方法はありません。
かといって、外科的処置を望む患者さんがいるのか、手術できる先生が多くいるのか、したとしても患者さんが満足のいく結果に必ずなるのか、、、。疑問は残ります。
皆さんも、足関節捻挫を扱う際は必ず既往を聞くことや、骨挫傷が隠れていないか確認するようにしてください。
そして足関節捻挫のほとんどが、初期に強固な固定を必要とします。実はあなたが原因で患者さんの人生を狂わせてしまっているなんてことにならないようにしていきましょう。
では、また。
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