「首が痛くない」ほねゆきが開発した提肘法とは

三角巾を使い画像

先日、ほねゆきが所属している日本柔道整復接骨院医学会から、いつものように会誌が送られてきました。どれも非常に興味深い内容で、発表されている先生は忙しい中でどうやって時間を割いているのだろうと本当に尊敬します。

その会誌(日本柔道整復接骨医学会誌Vol.30 No.3)において、『三角巾の装着方法の違いが僧帽筋上部線維部のヘモグロビン動態に及ぼす影響:村迫萌生,濱口夏花,児玉香菜絵,松本和久(所属敬称略)』という研究報告がありました。いわゆる通常の三角巾提肘は頸背部の筋疲労が起きやすいが、背中に結び目がくるような三角巾法をすると比較して頸背部の筋疲労が起きにくいというもので、臨床における現象を数値化して発表したとても興味深い内容でした。

今回はその発表を見て、三角巾も使い方が色々あるよなと改めて思ったので、三角巾での提肘について及びほねゆきの提肘について情報をシェアしたいと思います。

3秒で読める今回の記事のまとめ

頸背部の筋疲労なども出るため、三角巾(の通常の提肘の仕方)は患肢の挙上には使いずらい。ほねゆきは三角巾は患肢の挙上目的ではあまり使わず、三角巾は固定の保持や周囲への怪我人周知の目的で使うことが多い。患肢の挙上が主な目的な場合はチューブ包帯を特殊にアレンジして使用している。

今回の記事の目次


  • 臨床における悩み
  • ほねゆきの三角巾の使い方
  • 患肢の挙上をさせたい時は「ほねゆき式」
  • さいごに

臨床における悩み

柔整師や整形外科領域において、提肘(患肢の挙上・保持)の道具の代表格として三角巾がありますが、どうも使いづらいなぁと思う場面があります。

患者さんに使っていてよくあるのが「首が痛い」というものです。頸部のみならず胸椎レベルから、僧帽筋などの上肢帯を支える筋までに疼痛を訴えることが多いです。提肘させる場合は患肢を脱力させたい場合が多いので、上肢の自重を頸部に支えさせると、当然そういった症状が出るでしょう。

どうしても三角巾を使わなければならない時は、ほねゆきは以下のように指示・対策します。

  • 結び目を頸部から避けて作る
  • 姿勢を良い状態で保ってもらう
  • 頸部ではなく背部にかけるようにする
  • かける部分にタオルをあてがう
  • 自宅安静時や就寝時は外す

などでしょうか。ようは、接触を減らしたり頸部で重さを支えないようにしてもらうしかありません。

もちろん、前述した研究発表の中にあったように頸背部に負担のない提肘の仕方もありますが、患者さんの自己脱着のしやすさや、手部を上げ下げする調節のしやすさを考えるとなかなか良い具合の提肘方法に巡り合えていません。

また、橈骨遠位端骨折などで上腕から手部までギプス固定する際には、肘を鋭角位(鋭角位とは?)とする場合が多く、その状態だと肘部で三角巾の繊維がつっかかり、手部の下に隙間ができてしまい、このときも使いづらいのです。

ほねゆきの三角巾の使い方

なので、最近はあまり患肢挙上が必須でない患者さんにしか三角巾でのいわゆる通常の提肘はしないようにしています。指導も大変ですし、患者さんも辛くなることが多いし、あまり得がないからです。

患肢挙上が必須でない場合というのは、指骨の転位軽度の骨折や、上肢の打撲や捻挫などの腫脹や浮腫がそれほど多くは出ないと思われる症例のことです。

じゃあ、そういう症例には提肘しなくていいじゃん。

と言われそうですが、固定を保つ目的周囲に傷病人だと一目で理解させる目的で三角巾は使わせます。三角巾はまとめ買いすれば安いもので1枚100円とかですから、それらのメリットを考えると、患部の挙上がそれほど必要のない症例でも使わせた方がいいと考えます。

ほねゆきはそのような条件の時に上記理由で三角巾を使うのです。

患肢の挙上をさせたい時は

ほねゆきが本当の意味で患部を挙上させたい(心臓の高さに上げさせたい)時は、ほねゆきオリジナルの提肘法を使います。これはほねゆきが約5年前に開発(思い付いて実行した)方法です。

オリジナルと言っていますが、論文で発表したわけでもなんでもないので、このブログをみて公式に発表すれば、あなたのものです。時間に余裕のある方は実験して有意差を調べてください。(笑)

ほねゆきが考案した提肘は以下の図のようなものです。

ほねゆきが考案した提肘法です。チューブ包帯を使い作成します。
役割で2色に分けて描いています。

なんだいこれだけかいと思った方、これだけです。チューブ包帯を使用し、作成しています。首にかけるだけでは頸部の負担が強いので、それを補うために濃いオレンジ色のリングを足しています。

患者さんは肘をなにかで支えて手関節部のリングを外し、その後に首のリング、肩のリングの順で外すと容易に脱衣することができます。

さらに装着時に近い形で描きました。

頸部への負担を減らしたいので、肩にかけるリングの長さを調節して、肩からの提肘の要素が強くなるようにします。この調節が大切で、両方のテンションがうまく釣り合わなければどちらか一方しか機能せず、この「ほねゆき式」は成り立ちません。

ほねゆきはチューブ包帯を使っていますが、仕組みが同じであれば素材はなんでもいいです。

さいごに

三角巾ひとつ取っても、どうすれば患者さんの負担が減るか、管理がしやすいかを考えることはとても大事です。整復をどう組み立てるか、固定をどう決定するかなども同じで、「こうなるからこうだよね、こっちのほうがいいかな」などと色々と試行錯誤することは楽しいです。

昔から柔整師はクランメール副子やすだれ副子を工夫して使っていました。

みなさんから、「いや、こっちのほうがいいだろ」とか「このときにそれじゃ不便だよね」などという意見があれば是非教えてください!ほねゆきにとってもそうですが、読者のためにもなります!