肩鎖関節脱臼の簡易的かつ実用的な固定法

検査関節脱臼の固定

最近はめっきり紙の本での読書をしなくなりました。

昔は紙の本しかなかったので、タブレットで活字を読むことなんて想像もしていませんでしたが、現代となっては当たり前ですね。

ほねゆきとしては、文字の情報はとても大事です。これはかなり個人差があると思いますが、何か情報を得ようとした時に「文字」や「音声」、「絵・図」、「動画」などの情報伝達ツールの中でも、ほねゆきは「文字」が一番素早く正確に情報を得やすいと感じています。

皆さんに「情報を得る時には文字で読むことがいい」と押し付けているわけではありません。

何が言いたいのかというと、「人によって情報を的確に受け取るための方法が全く違う」というところに注目するべきだという事です。

ほねゆきは柔道整復術を業とする一方で、人に何かを伝えるという事を長年、仕事としてやってきました。伝え方の試行錯誤はある程度してきたつもりです。

そんな中でほねゆきは伝え方の正解に関してひとつの答えが見つかっています。それは、「伝える相手が複数いる限り、これといった伝え方の正解はない」ということです。

「え、答えになってないじゃん」と思うかもしれませんが、これが実はきちんとした答えで、裏を返すと「情報発信の対象者が複数いる限り、あらゆる伝え方を駆使しなければいけない」ということなんです。

これを知ると、世の中のいわゆるインフルエンサーがあらゆる情報媒体や業態を展開していることにガッテンがいくかもしれません。

ほねゆきもTwitterなどでそんな人を目にすると、フォローしなきゃなって思います。ほねゆきもそうなれるように頑張ります!!

さて、今日は久しぶりに臨床実技的な内容です!

来院までの流れ

先日、ほねゆきの接骨院にこのような問い合わせがありました。

患者さん

2週間くらい前、夜中にバイクで転んで肩を脱臼したんですけど、見てもらえますか?

聞いてみると、バイクで転倒してすぐ救急車で運ばれ、その時の当直であった整形外科の先生に診てもらったとのことです。

そこでは、「肩の関節が少しずれていて、それを幾分治しましたが完全には戻りませんでした。時間の経過と共に痛みがマシになってきますから痛み止めの薬を飲み続けて下さい」と指導されたそうです。

どうやら肩の脱臼と診断されて整復をうけたようですね。脱臼は即急に整復しなければいけませんから、救急車で整復できる先生のいる病院がみつかったのはよかったですが、「完全には戻らなかった」というのが気になります。

「肩関節脱臼を整復しても、完全には復位しなかった」・・・整復障害がありそうですが、肩関節脱臼において、そもそも半分戻るということはあるのでしょうか。

患者さん

別に腫れているわけじゃないんですが、湿布して冷やしても全然痛みが取れなくて。接骨院だと痛みの治療ができるかなーと思ったんですが。

色々とツッコミどころはありますが、ほねゆきは電話の段階ではまだほねゆきの患者さんだと決まったわけではないので、あえてあまり突っ込んだ話はしません。

脱臼してからずっと痛みは続き、上肢が動かせないままだとも言います。救急病院では何の固定もしていないとのことです。そして受傷から2週間も経っている。なぜ患者さんもそれほど放置してしまったのでしょうか。

教科書的には3週間を過ぎれば陳旧性と言われますが、臨床的には1週間も経てば、受傷初期からの施術とは内容がだいぶ変わってきます。どちらにせよ患者さんを見れば、真相はすぐわかりそうですね。

脱臼と診断されているのですから、その施術を行うためには医師の同意を必要とします。患者さんには、電話でもいいから救急病院の先生に、接骨院に行っても良いか確認してもらって後療施術の同意を得てもらいました。

いざ来院。

16歳の男子高校生です。母親と一緒に来院しました。受傷後2週間を経過しています。

来院時の何もしていない状態の外観です。変形が分かりますでしょうか。

右肩に疼痛を訴えていましたが、肩関節脱臼ではなく、どうやら肩鎖関節脱臼だったようです。

肩鎖関節脱臼であれば、話の辻褄(つじつま)が合いますね!

「完全には戻らなかった」というのも、納得です。ピアノキーサインを確認する時のように、だれでも押せば少しは戻りますからね。しかし、固定をしていないので、結果的には半分も戻っていないでしょう。

肩鎖関節と言ってもピンと来ないだろうと思って、救急病院の先生はこれを肩の関節と表現されたのでしょうね。

健側に比較して患側は、全体的に腫脹しています。

患者さんが言うように、右上肢を重力に抗して動かせないのは事実です。上腕を側胸壁に沿わせて、僅かながら動かせる程度です。

肩鎖関節部ではピアノキー現象を認め、肩を内転させると共に肩鎖関節部にクチッと音が生じます。トッシー分類の2度です。肩鎖関節靭帯の連続性はほぼ無くなり、烏口鎖骨靭帯まで損傷していそうです。

腋窩に毛布を入れてテコにし、胸を張らせるようにして鎖骨外端を押圧します。その肢位で包帯固定を施行し、上肢の重量で肩鎖関節部の鎖骨外端側に押圧する力が加わるようにしました。ワトソン=ジョーンズ絆創膏固定法と同じ原理ですね。

整復位の再現が理論的にできていれば、固定法はなんでもいいです。

固定後の外観写真です。腋窩枕子などの細かい工夫は除外しています。

ほねゆきは、肩鎖関節脱臼において靭帯を完全に癒合させにいく場合は体幹から腕までのギプスを巻いて、上肢の重さを逃した状態で完全に24時間、強固に整復位を保ちます。

そうすることによって管理も楽ですし、患者さんに対して指導しなければいけない注意時事項も減るので、患者さんも生活が非常に楽になります。

しかし、今回はあえて包帯による比較的簡易な固定を選択しました。靭帯の癒合というより、機能的治療がメインで、炎症疼痛管理のための固定です。

理由としては、以下のようなことが挙げられます。

①受傷から2週間経っており、ギプスによる強固な固定をしても損傷を受けた靭帯の距離を受傷前と同等に保ったまま癒合させることが困難であると判断したため

②患者さんと保護者が肩鎖関節の浮き上がりの残存や、それに付随する違和感の残存などの予後について十分に理解し、それでも構わないという意向があったため

③通院が細かくでき、清拭や包帯交換などの管理ができる状況があったため

整形外科の煩雑な診察では、ひとりの患者さんに対して十分な時間をとる事は難しいので、そういった意味でも、接骨での施術は価値があるのかもしれません。