陳旧性足関節外側靭帯断裂の悲惨な結末 ③ほねゆきの接骨院編

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こんにちは、外傷柔整師ほねゆきです。

さて、今回でこのお話は終結です。①整形外科編②整骨院編②-2解説まとめ編をまだ読まれていない方は先にそれらの記事をお読みください。

では、見ていきましょう。

患部をみていくっ

お母さん

それで、もうどうしたらいいか分からなくなって。友達から先生(ほねゆき)のことは骨折の専門だと聞いていて、今日伺った次第です。話が長くてすみません

ほねゆき

いいえ、丁寧に話してもらってよく分かりました。では、患部を見ていきましょうね。

これまでの経緯はこの記事では省略します。

ここで、ほねゆきは初めて患部を確認しました。みなさんにもまずは外観をご覧いただきましょう。

個人を特定できないよう画像は加工してあります。

さて、何が読み取れるでしょうか。

まず、はっきりわかるのは皮膚の色調ですね。左が患側ですが、別に日に焼けているわけではありません。

新鮮外傷の初期の発赤とは違って、少し黒っぽい発赤で、それが下腿や足趾にまで広範囲に見られます。

よく見ると違いますが、ぱっと見は蜂窩織炎等の感染症を思わせるような外観になってしまっています。

臨床の経験が豊富な先生は、これを見ただけで患部の状態が非常に悪いと考えると思います。患部の中で何が起こっているかを話し出すと長くなりますので、ここではあくまでも主観で書いていきますね。

そして足はやや内反になっており、健側よりもそれは強そうです。

足関節全周に腫脹がありそうですが、外果周辺は特に腫脹していますね。

足が内反してしまっているのは、外果部が主張しているからでしょうか。固定がそもそも内反位で作成されていて、それが悪かったのでしょうか。

爪は汚れています。爪の中にはよく見ると泥のようなものが入り込んでいます。管理の仕方が非常に悪いことが伺えますね。

普通であれば、感染症を予防するためにも固定をする前に皮膚は清潔にしますが・・・。

患部以外の観察

ほねゆきは足関節外傷であれば、必ず膝と下腿、足(足背、足趾)は確認します。

確認すると言っても、「足関節を捻るということは、膝の可動域が・・・」とか「足趾がうまく使えていないから捻挫するんだ」という気はさらさらありません。

同時損傷がないかどうか確認するということです。

例えば、果部骨折において腓骨高位骨折を見逃してしまうなどというのを防ぐためです。

骨折に限らず、同時に膝を打撲していないか、擦過傷がないかなどももちろん観察しなければいけません。

整形勤務時代に先生の診察が終わって固定を指示され、いざ処置を始めようとすると、「実は膝も痛いんです・・」と患者さんから訴えがあり、指示のあった処置後にもう一度診察の列にカルテを並べ直すなんてことが非常に多くありました。

そんなことが自分の院であっては、信用に関わるので患部以外もよくみましょう!

この患者さんの場合は、膝・下腿・足(足背、足趾)には明らかな外傷はありませんでした。

ただ、写真でわかるように下腿や足には発赤が見られます。

皮下には浮腫が貯留しているようで、いわゆるアロディニア(異痛症)として神経性に炎症が患部から波及している様子でした。もちろん、固定素材による接触性皮膚炎の可能性もあるでしょう。

治療開始時にこのような皮膚の状態だと、ほねゆきは「状態良くないなぁ」と思います。そもそもの靭帯損傷のことだけ考えて治療してられないからです。

皮膚が過敏になっていると清拭の際も気を使いますし、固定材料にも気を使います。

さて、患部以外の観察が終わったらいよいよ患部の触診です。

患部の触診

皆さんは触診する際に意識していることはありますか?

ほねゆきはあります。

いくつかありますが、研修に来てくれる人によく言うのは「考えて触りなさい」ということです。

ほねゆきが師匠にこう言われたので、そのままの言葉で言っちゃってます。しかし、Z世代には具体性のない表現は嫌われます。(おじさん方は気をつけましょう。笑)

具体的に言うと、「問診から得た受傷などの状況から損傷箇所や損傷度合いを考えて、確認する事項を明確にピックアップし、後でなぜそこを触ったかを説明できないような触診の仕方はやめなさい」ということです。

分かりづらいですね。

例えば、今回の症例で言うと損傷を受けていそうな部位はどこでしょうか。ほねゆきの脳内でピックアップした箇所をざっと書き出してみましょう。

〔外果周辺〕
腓骨遠位端部、前距腓靭帯・踵腓靭帯・後距腓靭帯、距骨外側、腓骨筋腱

〔内果周辺〕
内果、三角靭帯、距骨内側、後脛骨筋腱

〔後方〕
後果、距骨後方(三角骨)、アキレス腱周囲

このくらいは学生さんでも考えられるでしょうし、それぞれの注意点も多少は思い浮かぶでしょう!全て教科書に載っているか、本を漁れば出てきます。

最低でも、これらの情報を踏まえて触診しようよということです。もちろん、なぜこれらの組織が損傷を受けるかについても詳細に分かっていないといけません。

よくみる悪い例は、〈とりあえず全部圧痛をさぐる〉というものです。その姿を見ると、「この人は何も考えてないんだな」とほねゆきは思い、それ以降は患者さんを触らせません。

そのくらい思考は大事です。そして、考えるきっかけさえあれば、これは目の前に患者さんがいなくてもいくらでもシミュレーションができ、能力は向上します。

ほねゆきはまず足関節全体の浮腫を手技にて戻した後に圧痛を確認しました。後方→内果周囲→外果周囲という順で触診しました。

○・・・圧痛あり、✖️・・・圧痛なし、△・・・おそらくなし

〔外果周辺〕
腓骨遠位端部(✖️)、前距腓靭帯・踵腓靭帯・後距腓靭帯(○)、距骨外側(✖️)、腓骨筋腱及び支帯(✖️)

〔内果周辺〕
内果(○)、三角靭帯(✖️)、距骨内側(○)、後脛骨筋腱及び支帯(✖️)

〔後方〕
後果(△)、距骨後方(△)、アキレス腱周囲(✖️)

さぁ、問診で得られた情報の裏付けができてきましたね!

ここまできたら、もうほぼ全て病態を把握できています。

徒手検査

ほねゆきは前方引き出しストレス、内反ストレス、外反ストレスをかけて足関節の動揺性を健側と比較して確認しました。

外反ストレステスト→動揺性なし、目立った疼痛なし
前方引き出しテスト→動揺性著明、外果周辺に疼痛著明
内反ストレステスト→動揺性著明、外果周辺に疼痛著明、内果周辺疼痛あり

さて、いよいよ次はエコーを見ます。

今回はエコーまで載せていたら大変なので、次回の記事でレントゲンを載せます。

ほねゆきは全ての検査を終えて、患者さんと母親にこう伝えました。

「今回の疼痛や主張の症状に対しては治療可能ですが、足首の外側の靭帯は緩みを残して治ります。そして、今回は骨折(骨挫傷)もしていますので一緒にレントゲンを取りにいきましょう。」

では、また次回。