もくじ
なんて素敵なタイトルでしょう…(笑)
現場ではエコーとかって言いますが、正式には超音波画像観察(診断)装置と言います。長ったらしいですが、この記事では正式名称を使用しようと頑張りました。漢字が嫌いな人も呼んでくれたら嬉しいです。(笑)
エコーというのはまず、プローべ(プローブ)から超音波を出します。同一密度の組織内ではそれが直進しますが、密度の異なる境界面では反射と散乱を生じます。それらを再度プローべから入力し、画像に変換するのです。筋と骨では前者が薄い白色で後者が濃い白色に描出(びょうしゅつ)されたり、血腫は黒く描出されるなど、組織ごとに超音波の反射が異なるために描出される画像に色調(濃度)の変化が現れるのです。
1880年ごろに電圧効果というものが発見されて以来、それを超音波干渉計に応用し、画像へ変換できるようになったものが超音波画像観察装置です。1949年に腹部エコーとしてその技術が初めて論文で発表されています。リアルタイムで画像が描出できるようになったのは1971年。カラードプラが生まれたのは1981年です。意外と最近できた検査機器なんですね!
そんなとこで、今回は柔道整復師と超音波画像観察(診断)装置の関係についてお話ししたいと思います。我々柔道整復師とエコー(超音波画像観察装置)の歴史はまぁいろいろありました。
これはほねゆきの主観ですが、超音波画像観察装置が柔整業界に普及し出してから、すでに超音波画像観察装置を使っていた方々や柔道整復師の存在(法的・社会的な存在)を懐疑的に思っていた方々があれこれと声を上げて、超音波画像観察装置を使い続けたい柔道整復師の諸先輩方と戦ったのです。これを、エコー柔整師の乱と呼びます。(嘘です。)
ほねゆきの施術所でも、270万円くらいで購入したエコーを置いています。そして毎日愛でています。
超音波画像観察装置(その発売元含む)と柔整師は、紆余曲折ありながらもお互いがお互いを必要として現状を生きています。
法の解釈。
このブログを見ているのは柔道整復師の先生や、未来の柔道整復師である学生さんたちが多いと思います。学校ではこう習うと思います。
柔整師は「診断」をしてはいけない。「判断」はしていい。
「考えるな、感じろ。」的な言い回しですが、(笑)
診断行為は医業(医行為)にあたるため、柔道整復師が診断するというのは、医師法17条の「医師でなければ、医業をなしてはならない。」に違反する。柔道整復師が傷病を「判断」するのは問題ないというものです。
医師法で言う「医業」とは、一般に、「医行為を業として行うこと」であるとされています。
では、「医行為」とは何かという議論になりますが、この点については「医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為」とするのが通説的見解であり、過去の裁判の判例においてもこの考えが踏襲されています。
まぁ曖昧ですよね。(笑)しかし、この曖昧さこそが患者に利益をもたらすのです。
例えば、捻挫した足関節に包帯を巻いて固定したり、電療を行ったりすることは「医行為」に当てはまらないんでしょうか。それらの行為は保健衛生上危害を生ずるおそれがある行為ですよね。ということは、医師でない柔道整復師が捻挫した足関節に包帯を巻いて固定したり、電療を行ったりすることは医師法違反になるのでしょうか。
当然ですが結論から言うと、医師法違反にはなりません。それは、柔道整復師の行う施術が「医行為」ではなく「柔道整復術」だからです。仮に現場で患者さんにやっていることが医師と柔道整復師で全く同じであっても、この言葉の違いを生み出すことによって、法的な整合性を取っているのです。(と、ほねゆきは思います。)
患者さんが医師の治療ではなく、柔道整復師の施術を希望する場合には、それを受ける機会が保障されているのです。
簡単に言うと、全く同じ固定であっても、医師が医師法の範囲内で足関節捻挫に対して固定を行うとそれは「医行為」ですが、柔道整復師が柔道整復師法の範囲内で足関節捻挫に対して固定を行うとそれは「柔道整復術」になるということです。
法の成り立ちや、できた順番を考えると話はさらに盛り上がるのですが、今日は超音波画像観察装置がメインの話題ですから、話を戻しましょう、、、(笑)
言葉の違いがエコーにも現れる
私たち柔道整復師が用いるエコーは、「超音波画像観察装置」と呼ばれます。時々、「医療機関にある超音波画像診断装置とどう違うのですか?」という質問を受けますが、器械装置そのものは医師が用いる超音波画像診断装置と何ら変わりません。言葉の違いを分かってて、あえて使い分けてるんですね。
ほねゆきの施術所で使っているエコーも、器械本体裏側には「超音波画像診断装置」と表示されています。それをあえて「超音波画像観察装置」と呼ぶのは、私たち柔道整復師には診断を行う行為が認められていないからです。
本文では、医師が用いるものは超音波画像診断装置で、柔道整復師が用いるものは超音波画像観察装置と表現しましたが、装置そのものは同じものである上、厚生労働省による見解も明らかとなったこともあって現在では、柔道整復師が用いるものも超音波画像診断装置と呼ばれる傾向にあります。
使用の目的が違う?
今度は、「超音波画像診断装置でも観察装置でも同じ器械であるし、患者さんの傷病を診断するのには変わりないのではないですか?」という質問が出てきます。つまり、柔整師が接骨院で超音波画像観察装置を使用すると、傷病を「診断」していることと同義ではないか?ということですね。
答えはノーです。超音波画像診断装置を使用して患部を確認することと、診断することは違うからです。
エコーは確かに、接骨院で用いられる他の医療器械とは異なり、治療効果をもたらすものではありません。治療機械ではなく、検査器械の一つと言えるでしょう。私たち柔道整復師は患部の様子をエコー画像に描出し、それを見ることをしますが、これはあくまでも施術の補助として行うものです。この画像を元に、診断を行うものではありません。
施術の補助とは、例えば、損傷靭帯付近の血腫がなくなってきたから圧迫包帯を除去しようとか、損傷した筋断端がまだ癒合していないからまだしばらくは固定を続けようなど、施術を行う上での情報収集に用いると言うことです。画像を患者に説明して傷病名を伝えることを目的としていません。
これに対して医師は、エコーを用いて診断を行えます。具体的には、描出された画像を元に、腱板が損傷されている(腱板断裂)とか靭帯が断裂しているなど診断を行うわけです。描出された画像を患者さんに見せて、それを説明して診断名を告げる行為を行えます。
逆にいう、柔道整復師がエコーを用いて、その画像を患者さんに見せて説明し、傷病名を告げる行為は法的に許されないことになります。医行為にあたるためです。
施術所での実際の運用はいかに
ただ、柔道整復師は、腱板損傷や靭帯損傷など、いわゆる軟部組織損傷(打撲・捻挫・挫傷など)に該当するものは医師の同意を得ずして施術が行えます。また、施術に際しては、患者さんの病状についてインフォームド・コンセント(説明と同意)を行わなければなりません。ということは、腱板損傷や靭帯損傷では、患者さんにその損傷程度や状況について説明しなければならないわけですね。
自ずと、「前距腓靭帯と言う靭帯を損傷しています。これは足関節の捻挫です」というふうに、傷病名を告げることも必要となります。しかし、前述したように、柔道整復師は診断行為を行ってはいけません。一般の方が聞いたら、訳わかんないですね。(笑)
ここで、岐阜県健康局長が厚生労働省医政局医事課長あてに質問した文書を紹介しましょう。
これは、平成14年8月9日に、岐阜県健康局長が厚生労働省医政局医事課長に対して、柔道整復師がその施術所で超音波画像診断装置を使用しても良いかなどと照会した文書です。
厚生労働省医政局医事課長 様
岐阜県健康局長
施術所における柔道整復師による超音波画像診断装置の使用について(照会)
(一部省略)
当県としては、従前より「平成11年度医療監視等講習会質疑応答」21.における貴課回答「超音波検査は、臨床検査技師、衛生検査技師等に関する法律第2条第1項、第20条の2第1項及び同法施行令第1条第11号の規則により、診療の補助と位置付けられている。したがって、柔道整復師が当該検査を行うことを業とすることができない」に基づき対応しておりますが、取り扱いに疑義が生じましたので、(省略)下記事項においてご見解をお示しいただきますようお願い申し上げます。
1 超音波画像診断装置による検査行為は、医行為であり、診療の補助として行いうる診療放射線技師、及び医師の指導監督下で検査を行う臨床検査技師のみが行いうるのであって、柔道整復師は、当然にその施術の中では行えない。法に明文化されていないためその業務の範囲内で行いうるのでなく、行えるもののみを関係法規に明文化されていると解してよいか。
(以下省略)
医整第445号 平成14年8月9日
ほねゆきが勝手に要約しますと、、、
厚生労働省さんへ、こちらは岐阜県にある健康局っす。俺たちは前に厚生労働省さんが言ってたように、「柔整師がエコー検査を業にはできない」っていう話をもとに、接骨院には「業にはできないけど、まぁ診断行為しなければエコー使ってることには何も口出ししないよ」っていうスタンスでやってきたんだけど、なんか最近、近所のお医者さんたちから「柔整師がエコー使うなんて医師法違反だ!」なんて声が聞こえるからちょっと聞くけどさ、いちいち俺らも対応めんどくさいから公式な見解出しといてよ!聞こえてきた声書いとくから、そこんとこよろしく頼むよ!→「エコー検査は医行為なんで、技師さんとかが使うのはいいけど柔整師は当たり前に使っちゃダメでしょ。柔整師の法律に使ったらダメとは書いてないけど、法律っていいよって書いてること以外はダメだよってことじゃん?」
それに対して以下、厚生労働省医政局医事課長が岐阜県健康局長に平成15年9月9日に回答。
岐阜県健康局長殿
厚生労働省医政局医事課長
施術所における柔道整復師による超音波画像診断装置の使用について(回答)
平成14年8月9日付け医整第445号にて照会のあった標記の件について、下記のとおり回答する。
記
検査自体に人体に対する危険性がなく、かつ、柔道整復師が施術に関わる判断の参考とする超音波検査については、柔道整復の業務の中で行われることもある。
医政医発第0909001号 平成15年9月9日
ただし、診療の補助として超音波検査を行うことについては、柔道整復の業務の範囲を超えるものである。
こちらも、ほねゆきが勝手に要約しますと、、、
岐阜県健康局長さんへ、長ったらしいお手紙ありがとう。まぁ困ってるのは分かったよ。とりま回答しとくからうまく対応してね。→「エコーは侵襲がないから危険じゃないし、柔整師さんたちも施術の判断材料に使うこともあるでしょ。まぁ医師の元で診療の補助とかで柔整師が使うのは法的にダメっぽ。」
このように、柔道整復師が超音波画像観察(診断)装置を使用することは許されています。
ただし、「施術に関わる判断の参考として用いる検査」としてであって、「診療の補助」ではないというわけですね。茶番でしょうか、いいえ、真面目です。
具体的には何に注意して使えばいい?
診断についてもいろいろな考え方があるのですが、当たり障りのない方法として、次のような考え方が無難なところでしょうか。(^^;
【柔道整復師が用いる超音波画像観察(診断)装置の取り扱いについて】
1) 装置名の表現について
「超音波画像観察装置」、「超音波画像診断装置」のいずれの表現を用いても問題ない。
2) 超音波画像の見方について
患部の損傷程度の把握や施術方針を決定するための判断材料として、柔道整復師が超音波画像を見て用いることは問題ない。
3) 超音波画像を用いた患者さんに対するインフォームド・コンセントについて
「ここで骨折している」「ここで靭帯が断裂している」と診断と判断されかねない断定的な説明は好ましくない。インフォームド・コンセントとして超音波画像から得られる所見を患者さんに告げるのは許される範囲内と解釈されていますので、この場合は「ここで骨折しているように見えますね」「ここで靭帯が断裂しているように見えますね」と言う表現を用いるべきでしょう。また、その超音波画像から得られた所見を確定(診断)するためには、医療機関で検査を受けてもらうように勧めれば良いと考えられます。画像をそもそも患者さんに見せないといった運用方法もほねゆきはリスク管理としてありだと思いますが、どちらにせよ、患者さんには十分な説明が必要ですね。
やっと、最後に・・・
もう、文章書くのが楽しくて楽しくて。(笑)
まぁ、そんなこんなでいろいろと書いてきましたが、現代では接骨院に超音波画像観察装置があるのが主流になってきました。エコーの運用について、歴史的背景をしっているのと、知らないのとでは、患者さんに対する説明の細かなニュアンスだったりが変わってくると思います。
また今後、柔整師が日々の施術をする上でエコーを活用していくことはとても重要だと思いますので、業界としてなにか問題を問われた時にしっかりと返答できるように知識武装しておくことも大切だとほねゆきは考えます。
今回は公文書を引用して話を進めてまいりましたが、厚労省の見解は今後変わる可能性もありますので、注意深く追っていく必要があると思います。今回の記事の内容について、間違いなどありましたら是非コメント欄などに記載をいただけると嬉しいです。
なかなかエコーで患部を描出する方法が書いてある書籍がないのですが、ほねゆきはとりあえず最近出たこれを購入して読みました。一通り体系的に書かれていると思うので、これ読んで、あとはひたすらプローブ当てる練習ですね(笑)
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