腫脹は重要?

手が腫れている様子,症例の記録画像

なんてふざけたタイトルなんでしょう。ほねゆきはいつも記事を書いた後にタイトルを決めるのですが、記事をバーっと書いて構成いれて校正してってやってるとそれなりに疲れるのです。そして、その疲れが毎回バカなタイトルを生み出すのです。(笑)

そのため、ワードプレスのプラグインからはいつも「SEO対策不十分」とお叱りを受けます。いや、SEOとかAEO?とか横文字はほねゆきはわからんのだ。好きにさせろっ(笑)てことで、ブログスタートです!

腫張を見ることの重要性

まだ見ていない方はクリック!

先日のブログ記事の『皮下出血斑(皮下溢血)は骨傷を現す?』にて、外観から骨折の有無を判断できるか、どういったポイントをみることが大事か、をお話ししました。

問診が終われば、次は身体所見をみていくと思いますが、視診→触診→徒手検査という順でみていくのがセオリー通りですよね。ほねゆきはこの視診が一番重要で、一番思考力を割いてみるべきポイントだと思っています。

過去に学生さんの実習の姿を見ていても、視診をすっ飛ばして患部をとりあえず触ってしまう人が多い印象です。人間って、何がなんだか分からないと、とりあえず触ったり動かしたりするんですよね。

先ほど経験のない学生さんがすぐに患部を触りがちだと言いましたが、これは経験のある先生にも当てはまるとほねゆきは思っています。逆に経験を積むと外観などの様子を瞬間的に見ただけでも多くの情報を脳内で処理できてしまうので、外観をみることに脳内メモリを割かずに次へ行ってしまいがちで、そこで情報の取りこぼしが起きやすいです。

ほねゆきも未だにその感覚が頭をよぎる事があります。触診や徒手検査に入った段階で「あ、そういえばここの腫張の出方をしっかり見てなかったな」と思い出して、視診に戻るという事がたまにあり、いつも反省しています。

今回は、視診の際に絶対に見るべきである『腫張』の出方について、お話ししようと思います。

実際に来た患者さんの例

今回も具体的な症例を交えてお話ししていきます!過去のエピソードであるため、現在のほねゆきの施術所での対応と違う場面もありますが、その時の思考を交えて赤裸々に語っていきたいと思います。

患者さんの情報は適宜改変を入れており、個人情報は保護されております。なお、外観写真のブログへの掲載も許可を取っております。

60代の女性が、「自転車同士で衝突しそうになってケガをした」と言って来院されました。

生活道路を自転車で走っていて交差点に差し掛かったところ、前方から来た自転車と衝突しそうになり、それを避けながら急ブレーキをかけたそうです。自転車同士が当たることはありませんでしたが、急ブレーキをかけた際、右中指がハンドルに取り付けられて、相手のハンドルに付いていたベルの部分に当たったように思えるとのことです。とっさのことで記憶は定かではなさそうです。両足で踏ん張ったため、転倒はしていません。

左右比較してよく見てください。

自発痛はほとんどないものの、右中指基節部に腫脹が見られます。運動痛もなく、基節骨中央部の背側に圧痛を認める程度です。腫張の度合いで言うと、中等度でしょうか。

受傷は来院した当日です。その場合は必ず、何時ごろに受傷したか聞いておく必要があるでしょう。受傷したのは来院の2時間前。受傷からわずか2時間でこれだけ腫脹が及んでくる場合は骨損傷が懸念されるところです。

一般的に、骨髄性の出血の場合は受傷後早期(〜2時間以内)から腫脹が完成します。靭帯損傷や筋損傷の場合はそれと比較すると腫張の出現は緩やかで、受傷後数日かけて腫脹が完成することもあります。

この情報だけ見ると、骨折の有無を判断するのは非常に悩ましいです。

この患者さんは右中指の腫脹の他、右肩関節後面と右肩甲骨内縁に疼痛を訴えています。急ブレーキに際して腕で踏ん張り、ハンドルから上肢の長軸方向に外力が伝わって、肩関節や肩甲骨に及んだことが推測できます。負傷に際してかかった外力が大きいことが推測できます。このような自転車やバイクなどによる交通外傷は思いのほか外力が大きく、単につまずいて転ぶなどするよりも損傷が大きくなりがちです。

エコー(超音波観察装置)で検査しましたが、特に病変は見当たりません。結論から言うと、今回は骨折はないものだと思われます。基節部背側の打撲による皮下の損傷で、細静脈を切ったものでした。

この症例からは必ずしも 受傷後早期からの腫張 = 骨折 だけではないということが学べると思います。

この患者さんは「相手にぶつけられたんだ」と、少しばかり被害者意識が強く、来院時も鼻息が荒く興奮している様子でした。そのため、患者さんには「整形外科で検査したらヒビか何か確認できるかも」と対診を提案しましたが、結局、対診は見合わせたいとのこと。そういうわけで、腫脹や圧痛がなかなか改善しないようなら対診を行うという条件付きで、対診を留保することにしました。

運動痛もなく、限局性圧痛と僅かな自発痛のみの症状。対診したところで「骨損所見なし!」か、せいぜい「骨膜損傷が疑われます!」という回答が得られるのが関の山でしょう。それを見越して、あえてこういった患者説明をしました。

処置にしても、不全骨折(骨膜損傷)ではプライトンによる固定、動作時痛がないので骨損所見がなければアイシングのみといったところです。

今回は、患部には泥湿布をして包帯固定を施行しました。包帯は湿布の被覆にとどまらず、中指と環指(第4指)をまとめて手関節上部の環行帯に終わるものとしました。もちろん、患部の安静を保つ意味(疼痛があまりなかったので、これ以上疼痛を出したくなかった)もありますし、患者さんにとって処置をしっかりしてもらった感を演出したかったからです。

骨折と軟損の腫脹のちがい

これは完全にほねゆきの独自理論で、研究論文や統計データの結果ではありませんが、骨折と軟部組織損傷腫脹の腫脹の違いは以下のようなところだと思います。どの教科書にも載っていないので、完全な臨床経験則による言語化です。総論的に書くのでもちろん例外もあり、論文を発表されている先生などからするとなんと主観的なものかとご批判をいただくことも覚悟しています。

1.腫脹が完成するまでの時間の違い

骨折 … 骨髄性の出血があり、骨髄は血管が豊富なため出血が急速で、腫脹の完成が早い。

軟部組織損傷 … 骨髄性の出血ではないためジワジワと出血が長引く傾向があり数日かけて腫脹。

2.腫脹の完成形の違い

骨折 … 腫脹許容容量を最大に使い、パツッとした腫脹。範囲はある程度決まっていて、皮膚に余裕が少ない。

軟部組織損傷 … 骨折の腫脹と比べてボテッとしており、腫脹の境界線があいまいで広範囲。

3.治療経過による腫脹の引き方

骨折 … 骨折線をピタッと合わせるような整復ができれば、整復直後から急速に減少する。その場合、腫脹のピークは3〜5日目でその後は減少へ転じ、浮腫(出血ではなく水っぽい感じ)に切り替わる。患者さんの生活指導不足(挙上ができていないなど)による影響が腫脹の増減に直結しやすい。

軟部組織損傷 … 受傷後翌日くらいから浮腫が混じったような腫脹となり、骨折に比べて腫脹が減少へ転じるまでに時間がかかり、だいたい1〜2週間程度。骨折に比べて組織修復がうまくいかない場合には、腫脹がずっと少し残存してしまう場合が多い。

んー、難しい(笑)

これだけ臨床をやっていても「腫脹」を一つ取って言語化するのは非常に難しいですね。(笑)ほねゆきの臨床力のなさが伺えると思います。これを読んでいただいた方で、「いや、この場合はこうでしょ」とか「こう言う場合は例外ですよね」とか、「この特定の外傷はこういった特徴的な腫脹の出方しますよね」などあれば是非、コメント欄で教えてください!

ほねゆきも「この腫脹はあれだな(ニヤリ)」というのはいくつか思い浮かぶので、閲覧数などで反響があればまた記事にしますね!では、また・・・

腫脹などの外観をみる上で、元々の皮膚がイレギュラーな状態であるかもしれないということを念頭に置くことは非常に大切です。代表的な皮膚疾患も頭の片隅に置いておきましょう。ほねゆきが買った書籍はこちら。

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