人生で初めての「整復」を語る

初めての整復

ほねゆきは幼少期に、1年の半分くらいを九州の田舎で過ごしました。幼少期というのは、3歳〜8歳くらいです。

なので、小学3年生くらいまでは1年の半分しか学校に行かず、近所の人や家族と過ごしていました。実の父親は2歳で死別しており、今思えば母親は教育を受けさせる義務を怠っていたのかと思ってしまいますが、それでも立派(?)に育ったので母親はやはり偉大です。

田舎で何をしていたかと言うと、海と山で遊びました。よく、テレビなんかで無人島でイカダを自作して隣の島まで行くというような無茶な企画をやってますが、ほねゆきも同じような事をしてました。

さすがに1人でやっていたわけではなく、隣に住んでいたおじさん(通称:山じい)にノコギリの使い方や、番線留め、塗装などを習いました。

「そこに手を置いたらちょんがる(ちょん切れる)ぞ」とか、「その向きじゃいけん」とか、あーだこーだ言われながら、道具の使い方や手の使い方を習いました。

今になってふと考えると、当時の経験が非常に役に立っているなと思います。ほねゆきはよく、研修生に「そこに立ったら患部を持てないだろう」とか「その持ち方でどうやって牽引するんだ」とかうるさい事言うことがありますが、心の中で「あ、山じいも同じこと言ってたな」と思い返します。

意外と昔のものづくりの経験が今になって生きているのかもしれません。

さて、そんなこんなで今日はちょっと初心にかえって、ほねゆきの初めての整復について話したいと思います。

初めての整復は4年目の春

ほねゆきが初めて整復した外傷は肘内障です。

見習い(就職)先に、ぎゃぁぎゃぁと泣き叫ぶ幼児(2歳4か月だったかな?)が来院されました。

その時は既に、初検で来院された患者さんでも検査に当たり、判断がつきかねるももの以外はほとんど自分が初検時の対応を行っていました。それを全て師匠に報告し、師匠がほねゆきで対応が可か不可か判断するという流れでした。

ほねゆきの情報の中に間違いや、不明な点があるとすぐに指摘を頂いて修正するといった形でした。

幼児のお母さんからは「手を引いた途端、急に泣き叫びだした」と聞きましたので、「肘内障かな?」と思い、お師匠さんに「肘内障らしい患者さんが来ています」と報告すると共に整復を依頼しました。

それまでも、骨折や脱臼などが疑われる患者さんは自分が検査や処置を行うことなく、お師匠さんに報告すると共に整復を依頼し、自分は助手として対抗牽引や整復後の固定などしか、したことがありませんでしたから、その時も整復が必要そうですと伝えたのです。

ところがその日は、いつものお師匠さんとは異なりました。

「あっ、そう。それなら君が見ておいて下さい」

念願の整復

ほねゆきは内心、ガッツポーズでした。

肘内障の整復は実際にやったことはないものの、先輩から教えてもらって何度もシミュレーションを行ってあります。やっと自分で整復するチャンスを貰えたのです。

お師匠さんの腕を借りて整復操作を行った際は、「これなら患者さんが痛がらずに整復できるかもしれませんね。」というお墨付きをもらったこともありました。

肘内障の整復は行ったことがないものの、ある程度の自信があったように思えます。

しかし、いざ、幼児を前に検査を行おうとすると、先ほどまでは「肘内障だろう!」と思っていたのが「これだけ痛がっているのだから、上腕骨顆上骨折かも知れないんじゃないだろうか?」とか「鎖骨骨折の疑いもあるかも」など、いろんな疑問が頭の中をよぎってきます。

「いや~っ、これは肘内障だろう!」と判断をつけて、整復を行おうと幼児の手を持っても、「あれっ、肘内障の整復って、こんな持ち方で良かったのかな~?」と

あれだけ回数を重ねた整復練習なのに、いざ本物の患者さんを前にすると、頭の中が真っ白になってしまいました。

なんか、ものすごく長い時間、整復操作を行ったような気もします。結果的にはクリック音がして、動作も戻り整復は完了しました。

認定実技審査に臨む学生の皆さんは、この時のほねゆきのような感じで受験するのでしょうね。

このように、どの柔道整復師であっても初めて整復した時があります。ほねゆきのように学校で偉そうに教鞭を執っている者や、学会で数多くの症例を報告している人も初めての整復があるのです。

初めて整復する場面に直面するまでは、これだけ練習してあれば整復できるだろう!なんて思いがちです。

ほねゆきは気が小さいものですから、初めての整復で頭が真っ白になっったのかも知れません。でも、初めての整復に際しては誰でも少なからずの緊張感は感じるでしょう?

人それぞれに感じる緊張感は異なるでしょうが、緊張を感じながらも正確かつ速やかに整復できるよう身体で覚えておいた方が良いかも知れませんね。

できればいろんな人の手や足を借りて、整復シミュレーションを行っておくのがお勧めです。

皆さんの初めての整復の際には、ほねゆきのように緊張がなくスムーズに行われることを祈ります。