数日前,接骨院の玄関前を掃こうと思って外に出たら,伸長が3mくらいある男の人にこう言われました.
「ここは南極ですか?」
私は意味が分からずに怖くなって院の中に走って戻りました.
けれども,走っても走っても,自分が前に進んでいきません.
次の瞬間,ふと目が覚めると自宅のベッドに寝ていました.
そう,幻覚だったのです.
みんなも熱中症には気をつけようね!!!
さて,今日は「なぜ健康保険は現物給付なの?」とか,「そもそも現物給付ってなに?」という疑問に答えようと思います.
この健康保険の制度の成り立ちを知らずに,療養費申請している柔整師なんかいないよな?!
レッツゴー!
現物給付と現金給付
皆さんは,「現物給付」や「現金給付」という言葉は聞いたことがありますよね.
それぞれをしっかりと説明できますでしょうか.
それらは,公的な医療保険による保険給付の形式の話です.
基本的には健康保険の運用は現物支給で仕組み作りが行われています.
現物支給で賄(まかな)えない細かいところは,例外的に現金支給での運用です.
それは当時も現代も同じです.
現物支給:保険者(健康保険組合など)は直接医療機関に医療費を支払います.医療機関 は,保険者から受け取った資金で患者に医療サービスを提供します.
現金支給:患者は,まず自己負担で医療機関に医療費を支払います.保険者(健康保険組合など)は患者が自己負担で支払った医療費を後で払い戻します.
上図は,2つの違いをざっくりと模式図にしたものです.
まずは,これらの形式の違いを理解してください.
さて,先ほども言ったように,健康保険の運用は現物支給で仕組み作りが行われています.
それはどうしてでしょうか?
なぜ現物支給が主なのか
結論から言えば,被保険者が医療サービスを受けたいときに受けられない恐れがあるからです.
今にも倒れそうなのに,「今月は出費が重なって手持ちがないから受診できない...」となってしまっては,国民の公衆衛生は向上しません.
そもそもが,産業革命以降の労働者を守るという名目で作られているものですからね.
保険者とか被保険者という言葉についても,もう一度確認しておいてください.
保険者:保険契約を提供し,管理・運営する主体のこと
被保険者:保険に加入し、保険料を支払い、保険給付を受けることができる人のこと
さて,この現物給付というのは非常に特殊な形態であることも押さえておきましょう.
民間の医療保険を例に挙げて考えてみましょう.
例えば,とある保険では,入院すると1日あたり1万円の給付金が支給されます.
手続きは,入院期間が終わって医療機関へ医療費を支払ってから,加入者が入院したことを証明する書類を持って申請して,給付金がおりるという手順です.
「保険」において,本来はこの仕組みが正当な方法なのです.
それをあえて,公的な医療保険である健康保険は,はじめから一部負担金のみを医療機関に支払うという仕組みにしているということです.
それは,被保険者の負担を軽減するためなんですね.
これが健康保険法における給付の基本的な構成になります.
1922年(大正11年)の健康保険法から,現在の健康保険法において,この構成が続いています.
現金給付は例外的に存在
健康保険法第63条において,以下のようにも定められています.
第八十七条
保険者は、療養の給付若しくは入院時食事療養費、入院時生活療養費若しくは保険外併用療養費の支給を行うことが困難であると認めるとき、又は被保険者が保険医療機関等以外の病院、診療所、薬局その他の者から診療、薬剤の支給若しくは手当を受けた場合において、保険者がやむを得ないものと認めるときは、療養の給付等に代えて、療養費を支給することができる。
健康保険法においては,このように例外的に現金給付が認められています.
この条文を読み解くと,2つの場合が療養費が支給される場合です.
① 療養の給付若しくは入院時食事療養費、入院時生活療養費若しくは保険外併用療養費の支給を行うことが困難であると認めるとき
② 被保険者が保険医療機関等以外の病院、診療所、薬局その他の者から診療、薬剤の支給若しくは手当を受けた場合において、保険者がやむを得ないものと認めるとき
では,具体的にどんなものが現金給付なのでしょうか.
特に項目が定められているわけではないのですが,現状は以下の場合に療養費が支給されます.
- その地域に保険医がいない場合
- 医師がいてもかなり離れた場所にいるため、応急措置として市販薬を使用した場合
- 保険医がいても、その医師が病気などで診療に従事できない場合
- 事業主が資格取得届を出しておらず保険証を受け取っていなかった場合
- 治療用装具
- 柔道整復師による施術
- あん摩・マッサージ・指圧師,はり師,きゆう師による施術
- 生血
- 移送費
などなど,柔軟に対応されています.
柔整師の施術に対する療養費支給に関して,「柔整師の療養費は無医村があった,つまり整形外科医に簡単にアクセスできない時代が前提とされているから現代にそぐわない」という論調を見かけますが,
療養費が支給されるひとつのパターンとして「その地域に保険医がいない」などが考えられるだけであって,柔整師の施術が療養費の支給の対象となり得ていることとは全く関係がないことから,論外な意見だということが分かると思います.
それを言えば,「昔と違ってドラッグデリバリーが発達してるし,そもそも医師が薬も装具も院内で処方できるんだから,全部療養費は廃止だ」とも言えてしまいますからね.
さて,次回は柔整師と療養費についてもっと詳しく見ていきましょう.
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