患者さんは体の悩みを見分けられません。
先日、このような患者さんがほねゆきの施術所にいらっしゃいました。患者さんはだいぶ暗い顔持ちで、足取りも重く、不安そうに来院されました。
52歳,女性
主訴:3年前から朝起きた時に全身がだるい、指が朝こわばる
既往:高血圧、不眠症(マイスリー内服)
みなさんはこのような問診票をみて何を考えるでしょうか。ほねゆきの施術所では、今までに色々と問診票をアレンジしてきましたが、最近はあまり突っ込んでは聞かないような内容に落ち着きました。
この問診票をもとに傷病を推察して、的確な質問をするのが楽しいのです。臨床力を問われるところではないでしょうか。
個人情報を伏せた上で実際の患者さんの症状や経緯を書きますが、あくまでもこれは一例ですので、この症状=この疾患というわけではないことを、改めてご認識ください。
しっかりと問診は取りましょう
まず、第一に今回は外傷ではありません。主訴が「〇〇が痛い」や「〇〇が腫れている」などであれば外傷によるものなのか、他の疾患によるものなのか、もう少し患者さんに問診しなければ分かりませんが、今回は「朝起きたら全身がだるい」が主訴ですから、まずは病的なものを想像しなければなりません。
ほねゆきはまず、患者さんの症状に共感しながらひとつ質問をしました。
「とても辛そうですね。どうして今回は私の接骨院にいらしたんですか?」
ここでほねゆきは色々な患者さんからの回答を想像します。「マッサージを受けたくて」、「症状の原因が知りたくて」、「他の病院に行っても取り合ってくれなくて」などなど。こうきたらこうだなとか、こういう場合はこういう返し方はやめといたほうがいいかななど、色々考えます。
結果、問診を終えるとさらにこのような情報が出てきました。
【来た理由】
3年前から精神科に通院しており、全身のだるさを主治医に相談したところ、近所の接骨院などでマッサージを受けて様子を見るように言われたから
【これまでの経緯と症状】
3年ほど前から夫との関係が余計悪くなり、不眠症状が出現。精神科受診し睡眠導入薬を処方されている。2年ほど前からは起床時に全身のだるさが出現し、だんだんと増強。最近1ヶ月は、20分程度布団の中でストレッチングをしないと起きて動き出せなくなってきた。
だんだんと症状が強くなっているようですね。女性で50代、だるさ、だんだんと悪化する症状…全身性、不眠症、、、、なにかしらの自己免疫疾患の可能性が高いですよね。
ほねゆきは患者さんの自宅近くから比較的近い、自己免疫疾患を診ていらっしゃる内科に紹介状を書きました。ここで大事なのは、別に何という疾患か当てることはしなくていいということです。自分の範囲でないとすぐに判断し、患者さんにとって一番良いと思われる選択肢を取ることが重要です。
患者さんには、ほねゆきの施術所ではマッサージのようなことはできないこと、マッサージを行っても根本的な治療にならないこと、色々な疾患が隠れている可能性があるので専門の先生を受診することを伝えました。
お返事が返ってきました
3週間ほど経った頃、この患者さんについてのお返事が返ってきました。以下、内容です。
ほねゆき先生
この度はご紹介いただきましてありがとうございます。
ご紹介いただいた患者様は、当院の検査では確定診断に至りませんでしたので、FMの疑いとして都内の〇〇病院膠原病内科へ紹介いたしました。
その結果が分かりましたので、遅くなりましたがお返事を書かせていただいております。
患者様は現段階ではFM(繊維筋痛症)の疑いが強く、そのほかに関節リウマチを併発している可能性が高いとのことでした。現在は当院にて内服管理とさせていただいております。
この度は貴重な症例のご紹介をありがとうございました。
この患者様については、この返信をもって以上とさせていただきます。
今後とも何かあった際はよろしくお願いいたします。敬具。
このような自己免疫疾患は確実な診断よりも先行して治療が行われることもあると聞いたことがありますが、今回はそのような対応がとられたのだと思います。ほねゆきは専門ではないので詳しくは分かりませんが、自己免疫系の疾患はとても診断・治療が難しい分野であるようです。
FM(fibromyalgia,線維筋痛症)とは
繊維筋痛症とは、長期にわたって全身の筋肉の痛みと特徴的な圧痛を多数認め、通常の臨床検査では殆ど異常を認めないリウマチ性疾患です。一般臨床医学の授業でも習いますね。このようなときに、学校で教わることがいかに重要かと再認識させられます。
特徴を箇条書きにすると
- 圧倒的に女性に多い、発症年齢は平均49歳
- 3ヶ月以上持続する広範囲の疼痛や疲労感
- 朝の強張り、乾燥症状、痺れなどの異常感、不安
- その他の自己免疫疾患(全身性エリテマトーデス、関節リウマチなど)と併存する場合が多い
などがあるようです。ほねゆきも毎度このような患者さんが来られるたびに勉強になります。このような時ためにも、日頃から問診など含めて臨床症状をしっかり取ることが、次に同様の患者さんがきた時に役立つと、ほねゆきは考えます。
みなさんも、すべての疾患を網羅することは不可能ですから、基礎的な知識を身につけた上で、自分が対応して良いものかどうかのみきわめが出来るように日頃からセンサーを張り巡らせておくことが大事なのではと思います。
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