どこまでやるんだこの話をと思っている方もいるでしょう。(笑)そう思っている方は、とても臨床力のある方か、飽き性な方かのどちらかです。できればもう少し、お付き合いください。
今回の連投ブログの献立はこちらですね。
①エピソード編
②エピソード解説編
③発生理論編(この記事です⬅︎)
④治療編
いよいよ肘関節脱臼の理論をお話ししたいと思います。今回の目次です。
- 教科書のおさらい
- 発生メカニズム
- 整復操作を考える
教科書のおさらい
次のブログでもご紹介しますが、肘関節脱臼についておさらいしましょう。柔道整復学の教科書には肘関節脱臼についてこう記述されています。

肩関節脱臼に次いで多発する。青壮年に好発し、前腕両骨後方脱臼が大部分を占める。
柔道整復学・理論編 改訂第6版(2018,南江堂)279〜280p より引用(読みやすいよう一部改変)
前腕両骨脱臼の脱臼方向による分類
①後方脱臼
②前方脱臼
③側方脱臼(内側脱臼、外側脱臼)
④開排脱臼(前後型、側方型)
①前腕両骨後方脱臼
肘関節伸展位で手を衝いて倒れたり、後方から強い衝撃を受けて肘関節が過伸展されると肘頭の上縁が肘頭窩の上方に衝突し、ここが支点となり、上腕骨遠位端を前方に押し出す。強い張力を受けて関節包の前面が断裂し、上腕骨遠位端が前方に転位して(前腕骨は結果的に上腕骨の後方に位置する)橋骨頭は上腕骨小順の後面に接し、尺骨釣状突起は上腕骨滑車の後壁に乗る。
発生と同時に激しい疾痛があり、肘関節は軽度屈曲位(届曲30〜40°)で弾発性固定されて自動運動は不能となる。肘頭は後方に突出し、上腕三頭筋鍵が緊張して索状に触れる。ヒューターHūter三角の乱れがあり、外観が類似している上腕骨上伸展型骨折との鑑別が必要である。前腕は短縮してみえる。
臨床において、「肩関節脱臼=青壮年が多い」は間違いだと思っていますが(笑)、「肘関節脱臼=青壮年が多い」はその通りだと思います。
これはほねゆき統計なのですが、ほねゆき個人のこれまでの臨床記録によると
肘関節脱臼(肘内障含まない)経験症例数 34名 のうち、
10代:18%、20代:66%、30代:14%、40代:2% でした。
最年少15歳、最高齢43歳でした。
青壮年は15歳〜50歳を指す(50歳も青壮年?!)らしいので、青壮年率100%です。あくまでもほねゆき統計ですので、悪しからず。
教科書的な知識があればK先生のように前腕両骨後方脱臼と判断することは容易でしょう。
発生メカニズム
柔整の教科書にも書いてありますが、「肘関節が過伸展されて肘頭が肘頭窩に衝突し、ここが支点となり、上腕骨遠位端を前方に押し出すようにして脱臼する」機序でしか、明らかな骨折を伴わずに脱臼する方法がありません。
言い方を変えると、肘頭が割れるとか鉤状突起が大きく欠けるとかしないと、過伸展せずに肘関節脱臼が起こることはないということです。理解できるでしょうか。
まず、教科書に記載されている下記の文章について考察しましょう。
「肘関節が過伸展されて肘頭が肘頭窩に衝突し、ここが支点となり、上腕骨遠位端を前方に押し出すようにして脱臼する」

腕尺関節において、肘が伸展して肘頭が肘頭窩に完全に入り込むと肘頭はそこで動けなくなります。いわゆる尺骨の横方向などのカタツキがなくなります。
そうなると、そこからさらに肘伸展が強制されると、もう肘関節前方関節方が破断せざるを得なくなります。関節包が破断して前方を止めておく存在がなくなった瞬間に肘頭の滑車切痕の鉤状突起側が上腕骨滑車切痕から浮いて、動けなくなっていた肘頭が再び解放されて一気に尺骨が回旋しながら脱臼します。
さらに詳しいメカニズムについては、まとめたものがありますので今後お知らせします!肘関節脱臼は本当に奥が深いです….
整復操作を考える
②エピソード解説編のおまけでも少し触れましたが、基本的に整復は発生機序の逆です。つまり、過伸展受傷している場合は、脱臼肢位から一度過伸展へもっていき、上腕骨滑車を尺骨鉤状突起が乗り越えるようにして整復しなければいけません。
この時に、前腕長軸方向への牽引が必要になります。これを聞くと、「受傷と逆なら、受傷時に前腕軸方向に押し込まれてないと前腕軸方向に牽引する必要ないでしょ?」と思う方は多いと思います。これは、牽引しないと屈曲して行った時に尺骨鉤状突起が滑車に衝突してしまうからなのですが、今回は「整復は発生機序の逆」という理論に乗っかって考えましょう。
前項の発生メカニズムでは、前腕軸方向に押し込まれる力は説明しませんでした。さて、どういうことなのでしょうか。
結論から言うと、「前腕軸方向に押し込まれる力=地面からの反力」です。よって、地面に手をついて体重が乗り、肘が伸展強制されている場合には地面から押し込む力を受けていると考えることができます。

さらに、もうひとつ尺骨を近位に押し込む力が存在します。どのような力があるか、是非考えてみてください。
答えは次の④治療編の記事でご紹介します。ぜひ、コメント欄で考察をください!!!
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