皮下出血斑(皮下溢血)は骨傷を現す?

見慣れない見た目はゾッとする・・・

時系列や個人情報は全て改変しています。

溢血(いっけつ)は最近の医療現場では使わない言葉ですが、昔は言ってました!

皆さん、あんまり日常的に外傷患者を診ていないと広範囲の皮下出血斑(溢血)を見たときに「これはやばい」「重症だ!」「すぐに対診を!」「わかる先生呼んで!」などと思っちゃうんじゃないでしょうか。かく言うほねゆきも臨床1年目の時は、見た目が大変なので、それはそれはびっくりして怖かったのを覚えています。ここでは、皮下出血斑で損傷の度合いあるいは骨傷の有無を判断することができるのかについて書きたいと思います。

接骨院をやっていると嬉しいことに(患者さん視点では悲しいことだよね…)色々な患者さんが来てくれます。先日はこのような患者さんがふらっと来られました。

掌側

72歳の女性。原付バイク(アスファルト、時速40km)で走行中に左に転倒し、左肘から手にかけて腫れてきたとして来院されました。角を曲がろうとした時に白線を踏んで滑って転倒し、左前腕尺側全体を地面に打ち付けたようです。

画像からも解るように、腫脹は肘関節から手部にまで及んでいます。腫脹のみならず皮下出血斑も著明で、手背にも浮腫が生じています。

この患者さんの受傷は9日で、受傷当日はそれほど痛みを感じなかったので何も手当てをすることなく放置したとのことです。受傷翌朝(10日)から疼痛を感じたため、自宅で冷湿布をしたものの徐々に腫脹が出現し、11日には皮下出血斑が現れたため、驚いてこの日(受傷から2日後)に当院へ来院に至ったものです。(今回は脱線話が多く、文字数多くなりすぎたから冷湿布とか温湿布についてはまた別で記事書こうかな笑)

見た目から何を想像するか/何を考えるか

前腕橈側
肘関節屈曲位

まずは受傷からどの程度時間が経っているかを想像することができます。もちろん、問診の段階で受傷日や時間は聴取できることが多いですが、聴取した時間経過と患部の様子に極端に乖離があれば、患者さんが誤って報告しているかもしれませんし意図があって違うことを言っているかもしれません。

過去にほねゆきが体験したのはDV(家庭内暴力)の隠蔽です。夫が妻に暴力を振るっていて、さすがに症状が引かないと思って一緒に接骨院に来院されたのですが、患部の皮下出血斑(もちろんその他の症状も併せて)と夫の話す受傷の内容が妙に合致しなかったのです。。。。(この話はコメント等で反響があればまた後日話しますね笑)話を戻します。

前腕掌側は特に、皮下出血斑が顕著です。これは、受傷後の肢位が前腕回内位でいた時間が比較的長かったことを示唆しています。橈側から見る上では、肘関節に皮下出血斑が著明です。前腕の全体を地面で打撲したとの患者さんの訴えですが、外力は主に、肘付近に対して加わったものと考えられます。

今回の写真のような腫脹と皮下溢血。
これだけ見ると、骨折を疑いたくなりますよね?

症状としては、打撲部の疼痛や圧痛はそれなりにあるものの、Malgaigne痛には程遠いものです。
運動制限にしても、肘関節の屈曲動作時や屈曲に幾分疼痛を伴う程度で、肘関節伸展や前腕回内回外運動には全く疼痛を伴いません。関節包内の運動も滑走良好です。

結論を言うと、今回の症例では骨折ではなく打撲です。「打撲」というのはほねゆきは組織に損傷を表すものではなく、「打撲した(打ち付けた)」という事象を表す言葉だと思っているので、厳密に言うと今回は「打撲による皮下組織の損傷」かなぁ。

いつもなら対診を行わずに施術を継続するのですが、Blogに掲載して骨折でないことを証明するために、患者さんの了解を得て対診を行って確認しました。(^^;

要するに、これだけの腫脹や皮下溢血が伴っているケースでも、骨折ではなく打撲である場合もあり得ることです。見た目で騙されてはいけませんね。軽く見てもいけないし、過度に不安視してもダメです。(分からなければ過度なほどに処置することが望ましいですが、患者の不安を煽ってはいけないということです。)

今回のケースでは、受傷当日はそれほど痛みを伴わなかったために冷罨法(れいあんぽう)を行っていません。冷罨法を最も施すべき時期に冷やせていなかったことが、今回の腫脹や皮下溢血を招いた原因とも考えられるでしょう。無論、皮下溢血が出ることが組織修復にどの程度影響(良いか悪いかどちらにおいても)があるかは、ほねゆきは説明できません。勉強不足です。m(_ _)m

しかし、「皮下溢血が制限なく広がる状態」=「腫脹・浮腫が必要以上に広がる状態」の場合が多いと思います。必要以上の腫脹や浮腫は疼痛・関節拘縮につながりますので、皮下溢血を抑える(早く引かせるのは別)という考えは施術において結果的に間違えではないと考えています。

今回のような症例でも骨折かどうか判断がつきにくい場合はもちろん、対診をお勧めします。これは医科に限らず、わかる先生にバトンパスしたほうがいいという意です。なお、対診を行って骨損傷がない旨の診断があれば問題はありませんが、このケースで自分がもし単なる打撲と判断した場合は必ず、受傷直後の初期治療が適切でなかったこと(十分に冷やせていなかったなど)が原因で、これだけの腫脹と皮下溢血が出現したことを患者さんに説明しておくべきでしょう。患部のコントロールももちろんですが、患者さんの安心を常に意識することが、外傷施術において重要です。

なお、もし患者さんが骨損傷の有無について不安を訴えた場合は、自分が打撲と判断していても対診を行うことが必要です。対診もまた、施術の一貫なのです。

また、気づいた方も多いと思いますが、環指(第4手指)に指環をはめていますね。今回の症例のように腫脹が著しいものは、理由を説明して初検の段階ではずしてもらうようにします。(柔整師が施術所で指輪を外すことは一般的な応急処置として全く法的に問題ありませんが、指輪を壊したとか、傷付けたとか、失くしたとか、そういうトラブルには気をつけましょう。笑)

そして指輪を外した後は「肩から下の怪我をしたときはすぐに指輪や時計の装飾品は外しましょう」と今後の対処法を伝えましょう。未来の不幸な患者さんを作らないようにしましょう。

初検段階で容易に指環がはずせるものであっても、今後の腫脹の出現程度によっては取り外す必要が生じます。腫脹の程度によっては指環を切ってしまわなければならないこともあります。医療機関によっては結構、そのままにしてしまうところもありますが、実際に危ない患者さんを目の当たりにしたことがあるとその重要性がわかるでしょう。

さいごに

皮下出血斑から読み解ける情報はいっぱいあります。施術において、皮下出血斑に対してこういうアプローチをしているなどご経験のある先生はぜひご意見をください!

また、超音波画像観察装置があるとより自信を持って施術にあたれますね。しかし、物は使いようでうまく使えないといけません。ほねゆきも日々勉強ですᕦ(ò_óˇ)ᕤ

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