皆さま、お久しぶりです。
いよいよ3月も終わろうとしており、学生さんたちは春休みに順に突入し、皆様の柔道整復施術所におかれましては午前中の施術が忙しくなっていることと思います。
ほねゆきの柔道整復施術所においても、もともと午前中に予約していた患者さんと、春休みになって午前中のうちに用事を終わらせたい学生さんの親御さんとの間で、予約枠争いになっています。
と言っても、ほねゆきの柔道整復施術所は、通っている患者さんの全体数自体が少ないので、それほど困ってはいません。
ほねゆきの柔道整復施術所の患者数は3月末時点で20人くらいですからね。
さて今回は、数ヶ月前からTwitterでも話題になっております、「整骨院」という名称について、これの使用が良いのか悪いのか、悪いってことにしようぜ?論争について、今回は記事にしたいと思います。
あえて柔道整復施術所と何回も書いてみたのですが、やはりめんどくさいですね。
個人的には「接骨院」でも「整骨院」でも、どっちでも良いでしょ派です。
あ、ほねゆきの院は「〇〇接骨院」です!なぜかって…なんとなく。笑
さてさて、本題を一つずつ見ていきましょう!!
当たり前ですが、この記事にはほねゆき個人の見解が含まれます。なるべく客観的な事象とほねゆきの見解を分けて理解できるように構成してありますが、読者の方はそれぞれを分けてご理解ください。
もくじ(クリック!)
柔道整復師法の「広告の制限」
まず、柔道整復施術所の「広告の制限」を歴史を踏まえて見ていきましょう。
柔道整復師の施術所の名称について考えるときに、まずは「施術所で広告していい事項」を考慮しなければいけません。
広告していいよ!となっていれば、それを施術所の名称に使っても差し支えないと判断できますからね。
逆に、ここに記載のない、広告をしてはいけない事項を施術所の名称にするのは、どうなんでしょう。法律は学んでないですが、それも考えてみます。
昭和45年4月14日、第3次佐藤内閣時の第63回特別国会にて柔道整復師法(法律第19号)が公布されました。
柔道整復師の皆さんは、柔道整復師法の第24条は学生時代に毎朝暗唱したかと思います。
第二十四条
柔道整復の業務又は施術所に関しては、何人も、文書その他いかなる方法によるを問わず、次に掲げる事項を除くほか、広告をしてはならない。一 柔道整復師である旨並びにその氏名及び住所
二 施術所の名称、電話番号及び所在の場所を表示する事項
三 施術日又は施術時間
四 その他厚生労働大臣が指定する事項
2 前項第一号及び第二号に掲げる事項について広告をする場合においても、その内容は、柔道整復師の技能、施術方法又は経歴に関する事項にわたつてはならない。
柔道整復師法(法律第十九号)
ここには、施術所の名称を広告してよいことは明記してありますが、その名称がどんなものであるか、どのような条件であるか、具体的な事は書いてありません。
実際の運用としては、当時(昭和45年〜47年頃)は前述の第24条の第1項第4号の「その他厚生労働大臣が指定する事項」として、「ほねつぎ」のみが許可されていたようです。
次に、昭和47年に柔道整復師法が一部改正され、現代までこれが続きますが、「接骨」の文言も広告していいこととなりました。
柔道整復師法第二十四条第一項第四号に基づく告示の一部改正について
(昭和四七年一月一七日)
(医発第四八号)
(各都道府県知事あて厚生省医務局長通知)標記については、別紙写のとおり昭和四十七年一月十日厚生省告示第二号により改正されたところであるが、本改正により柔道整復師法第二十四条第一項第四号に基づく広告し得る事項として新たに「接骨」がつけ加えられたので、ご了知のうえ、各関係機関等に対してよろしくご指導方お願いする。
これにより、「その他厚生労働大臣が指定する事項」として「ほねつぎ(又は接骨)」と明文化されて、「ほねつぎ」と「接骨」は広告していいこととなったようです。
医師法における「名称」の制限
さて、次に考えないといけないものは医師法です。
第十八条 医師でなければ、医師又はこれに紛らわしい名称を用いてはならない。
医師法(昭和二十三年法律第二百一号)
柔整師が自分を医師だと言うことはあり得ないんですが…
言い換えれば、上記が柔道整復師の広告の制限の事項だということもできます。
「これ(医師)に紛らわしい名称」はダメだというものですが、一般的な解釈としては、『「医」を付けた名称を用いてはならない。』というものです。
「医」を付けて、例えば「柔道整復医」などの院名にしてはダメですね。
院名に「〜医」とつける人はまずいませんし、患者さんが柔道整復師を医師と間違えるようなことをしちゃダメというのは非常にわかりやすいです。
まぁこれは、柔道整復師の施術所の名称のことを考えられた条文ではありません。
医療法における「名称」の制限
さて、柔道整復師法に施術所の名称について記載がない以上、これが柔道整復の施術所の名称を考えるにあたって、それに関連する法としてドンピシャ(最近は死後?)なものになるのでしょうか。
しかし、医療法の成り立ちについて少し調べたのですが、これは医科・歯科の疾病の治療をする場所を定める法で、柔道整復師の存在を想定して作られたものではないようです。
ですが、「〜以外はこういう名称をつけてはダメ」という条文は、間接的に柔道整復の施術所の名称を限定する要素になり得そうです。
専門家でも解釈が分かれそうですね。
第三条 疾病の治療(助産を含む。)をなす場所であつて、病院又は診療所でないものは、これに病院、病院分院、産院、療養所、診療所、診察所、医院その他病院又は診療所に紛らわしい名称を附けてはならない。
2 診療所は、これに病院、病院分院、産院その他病院に紛らわしい名称を附けてはならない。
3 助産所でないものは、これに助産所その他助産師がその業務を行う場所に紛らわしい名称を付けてはならない。
医療法(昭和二十三年法律第二百五号)
柔道整復の施術所を「疾病の治療をなす場所」だと捉えるのであれば、病院や診療所と紛らわしい名称はつけてはいけないことになります。
例えば、「柔道整復医院」や「接骨医院」、「ほねつぎ病院」、「柔道整復科」などでしょうか。
柔道整復の施術所が果たして「疾病の治療をなす場所」なのかと言われると、これは否定する材料は乏しいように思います。
第二条 この法律において「柔道整復師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、柔道整復を業とする者をいう。
2 この法律において「施術所」とは、柔道整復師が柔道整復の業務を行なう場所をいう。
柔道整復師法
柔道整復師法の第2条にこのような記載があります。
「そもそも柔道整復術って何?」と思った方はこちらの記事『柔道整復師法は矛盾している?』も合わせて読んでみてください。
「整骨院」が柔道整復師法違反か
ここまでは柔道整復師の施術所の名称について、該当するであろう各法の観点から、何が定められていて、何が違法となり得そうかを、見てきました。
しかし、今回の記事で書きたいのは、柔道整復師の施術所の名称に「整骨院」を使用することに違法性があるか、又はふさわしくないと言える根拠がありそうかどうかということです。
ここでは勝手に考察したいと思います。
まず、柔道整復師法を見たときに、第24条の第1項第2号に「施術所の名称」とあり、名称は広告してよいことになっていますから、
「整骨院」が第1項第4号に基づく事項としての「ほねつぎ(又は接骨)」に当てはまらないからといって、これを違法ということはできないのではないかと思います。
柔道整復師法には、広告を制限するものはあっても、名称を制限するものはありません。
そして、名称は広告していいことになっています。
例えば、柔道整復の施術所に「ほねゆき整骨院」という名称で保健所に届け出てそれが受理された場合、柔道整復師法第24条を考えると、第1項2号では施術所の名称として「ほねゆき整骨院」という看板を掲げてよく、第1項4号では厚生労働大臣が指定する事項としての「ほねつぎ(又は接骨)」に「ほねゆき」も「整骨院」も当てはまらないので「ほねゆき整骨院」という看板は掲げられません。
このように、いろいろな矛盾が考えられてしまいますので、今回この施術所に関するガイドラインを作ろうという話が持ち上がっているのでしょうか。(後述します)
しかし、ここで大事なのは以下のポイントだと思います。
・柔道整復師法では施術所名を規定していない
・条文中の「広告」は施術所名を想定したものではない
・通念上、柔道整復の施術所名は「医師ではない柔道整復師の営むところであることが分かるもの」とされてきた背景がある
「ここにこう書いてあるからこうだ」と言うためには、その文言となった背景を知らないといけないのかもしれません。
「整骨院」が医師法違反か
次に、医師法を見ていきましょう。
ここで考えるべきは「整骨院」が「これ(医師)に紛らわしい名称」に当たるかどうかでしょう。
そもそも、「院」と言っていますから、人を指す言葉の「医師」とは誰も間違えないでしょう。「整骨」も同じです。
柔道整復の施術所の名称としての「整骨院」が医師法違反だというのは、厳しそうです。
「整骨院」が医療法違反か
最後に医療法についてですが、柔道整復の施術所を「疾病の治療をなす場所」だと捉えるのであれば、「整骨院」という名称が「病院や診療所などと紛らわしい名称」かどうかという点を考えなければいけません。
さきに例を挙げた、「〜医院」や「〜病院」、「〜科」、「〜診療所」にはもちろん当てはまらないですが、「整骨院」が病院や診療所などと紛らわしい名称かどうか…。
単純に名称だけで見たときに、病院や診療所などと紛らわしいとは言えないと個人的には思いますが、
社会通念と言いますか、現代における一般認識がどうなのかというと、私の感覚と合っているかは分かりません。
確かに、「整形外科」と「接骨院」を混同している患者さんは臨床では見受けられます。
それゆえに、「整骨院」という名称が「病院や診療所などと紛らわしい名称」であると主張する人はいるのかもしれません。
しかし、その混同が果たして「整骨院」という名称によるものかというと、これは個人的にはクエスチョンマーク3つです。
これは完全な私見ですが、患者さんが「整形外科」と「接骨院」を混同してしまう理由として、患者さんが受ける対応が似ていることが非常に大きいかと思います。
つまり、「整骨院」と「整形外科」の混同は、その名称によるものではなく、その中身によるものだということです。
もちろん、柔道整復師の我々からしても、整形外科での治療と柔道整復施術所での施術は全く違うものだという認識です。
ただ、患者さんはそれがわからない場合が多い。
そう考えると、柔道整復の施術所が「〜整骨院」という名称をつける又は広告することが医療法違反とは言えないのかもしれません。
なぜ「整骨院」が見直されるのか
さて、ここまでは柔道整復師の施術所の名称としての「整骨院」に違法性があるのかどうかを見てきました。
では、なぜ今になって「整骨院」という名称が見直されようとしているのでしょうか。
ここで、今回の記事を書くことになった発端である厚労省のHPにある検討会の資料を見てみましょう。
あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師等の広告に関する検討会
2018年5月に「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師等の広告に関する検討会」の第1回が開催されておりまして、霞ヶ関で行われたようです。
そして、議事録にはこう書いてありました。
椎葉 大臣官房審議官の発言より一部抜粋
あん摩マッサージ指圧、はり、きゅう及び柔道整復の施術所における広告につきまして、社会保障審議会医療保険部会におきまして適正化を行うべきとの御指摘があったところです。
一方、都道府県等から広告可能事項の明確化の要望があったことを踏まえまして、患者さんが知りたい情報が適切に提供される仕組みとするためにも、現行の広告規制に関する御意見を十分に踏まえながら、慎重に検討していく必要があるというように考えているところでございます。
2018年5月10日 あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師等の広告に関する検討会(第1回)議事録
社会保障審議会医療保険部会「あん摩マッサージ指圧、はり・きゅう療養費検討専門委員会」と「柔道整復療養費検討専門委員会」において、違法広告の適正化を行うべきとの指摘があって、今回の検討が始まったようです。
柔道整復施術所の規制が強まれば、療養費の支払いは下がります。
また、医療法において、医科や歯科のウェブサイトにおいても他の広告媒体と同様に規制の対象とし、虚偽又は誇大等の表示を禁止し、本格的に是正命令や罰則等の対象としようとする動きがあったのですが、
これを受けて、柔整の広告についても光が当たったようです。
≪施術所名について都道府県等の要望≫
・施術所名に関する基準の明確化
資料3 実態調査の結果(PDF:765KB)
(不適事例とその理由、具体的な名称、施術の種類を明記する必要があるか、外国語表記の使用可否、効果効能を類推する文言の使用可否、部位名等の使用可否、ロゴマーク等の使用可否、「整骨」の使用可否、民間療法名称の使用可否、あはき、柔整を併設する場合の名称等)
・施術の種類が明確な施術所名とするべき
・名称以外の広告事項で施術の種類が明確になっていれば、名称は自由でいいのでは ・○○治療院等については,施術所であると認識されており、使用可能としてはどうか ・「整骨」という名称は、一般的に認知されおり、広告可能事項に追加しても支障はない
また、開設届を受理したり、施術所を指導する立場の都道府県(保健所)などからも広告の内容を明確にしてくれと要望があったようです。
こういったことを踏まえて、ガイドラインの作成という結論に向けて話し合っていきましょうといって、検討会が開かれました。
歴史的にも、例えば医療法が改正されるときなどは、いきなり法改正や法制化ではなくて、業界でガイドラインを作成して、それでも言うことを聞かなければ法制化するという流れはあるようですから、その流れを汲んでいると思われます。
出席者の方からはこのような発言もあったようです。
三宅 泰介 (健康保険組合連合会 医療部長)さんの発言より一部抜粋
「健保組合は全国に 1,400 ありますが、その一部で作られた「保険者機能を推進する会」というグループがありまして、こちらが千代田区内の柔整の施術所の看板広告をほぼ全件歩いて調査をしたことがありました。
これは新聞でも取り上げられて相当数の問題が見付かったということで話題になっております。そうした実態も踏まえて、早急に患者を守る、あるいは不正を防ぐという観点で、法令なりガイドラインを明確に規定していただきたい」
2018年5月10日 あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師等の広告に関する検討会(第1回)議事録
「整骨院」という名称を考え直す以前に、施術所名以外のあからさまな「広告違反」が横行している事実があるんだということのようです。
そもそも、「広告違反してるよね」と。その流れで施術所名にまで話が及んでいるようです。
「ついで」に検討しとこう、ということなんですかね。
前田 和彦 (九州保健福祉大学教授)さんの発言より一部抜粋
例えば柔整だと「整体」という名前を使って、整体は国家資格ではありませんので、いわゆる広告制限は余り掛かっておりません。
それに対して、届出のほうは接骨院になっているので、柔整師になっていますので、保険が適用できる。いわゆる療養費が使えると。
こういったところで、非常にあり得ないような広告をした上で患者さんを集めて請求だけを行っている方が全国的に非常に多くなっている点があったので、やはり無資格に対しての広告制限もきちんと捉えた内容を作るべき
2018年5月10日 あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師等の広告に関する検討会(第1回)議事録
そんなとこが本当にあるのかよ、といった感じですが、確かに、実際に違法なことにつながるものがあるとすれば注意を促さないといけないのかもしれません。
このように「整体」という看板を出す柔道整復の施術所もあるという流れで、施術所の名称について規定しようという話にも繋がっていくのでしょうか。
そして、かの有名な柔道整復師の代表の先生はこう言っていました。
三橋 裕之 (公益社団法人日本柔道整復師会元理事)さんの発言より一部抜粋
実は我々日本柔道整復師会に新入会の柔道整復師が来られるのですが、その中で、治療院という名称で届出をしてくる柔道整復師が何人かいるのです。
そうしますと、保健所で例えば治療院と名前を付けて通ってしまうと、厚生局でも受けざるを得ないというところで、厚生局に電話をしても、「いや、もう、一度保健所で通ってしまうと」というようなことで、実は変えられないみたいな話になってしまって、我々から逆に施術者にその話をして、改めて治療院という名称を外させて、接骨院という名前で登録させるということをしております。
しかし、例えば個人でやられているような柔道整復師の方々は、そのまま通ってしまうと、治療院という名前で恐らくやられていると思います。通常であれば、これは法的にも認められていないので、これはいかがなものかなと思いますので、先ほど申し上げたとおり、保健所と厚生局の情報提供、あるいはつながりがどうなっているのか、もう一度考えなければいけないかと思います。
2018年5月10日 あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師等の広告に関する検討会(第1回)議事録
こういう話の流れから、どうして「整骨院」がどうこうといった話になるのでしょうかね。
また、三橋先生は柔道整復施術所の名称として、「〇〇治療院」は法的に認められていない、と言っていますが、何を根拠にそのようなことを言っているのかは分かりません。医療法でしょうか。
「整骨院」というのがどうこうというのはこの段階では出てきませんが、このような流れで「施術所の名称」が議題に上がったということです。
そして、施術所の名称について具体的な規定がないのでガイドラインを作ろうという流れに進みます。
議事録を読んでもらえると分かりますが、いろいろな立場の人が好き放題言ってます。
まぁ会社の会議でも、そういうもんです。
検討会における「整骨院」への意見
さて、検討会は10回以上行われているのですが、ほねゆきが勝手に各回の議事録から「整骨院」という名称について深く関わる発言をピックアップしてみました。
そうすれば、なぜ具体的に「整骨院」が議題に挙がったのかが、なんとなくわかるかもしれないと思ったので、そうしてみました。
暇な人はぜひ、引用元も読んでみてください。
参考:議事録に「整骨院」が出てくる回数
第1回(2018年5月10日) 0回
第2回(2018年7月18日) 6回
第3回(2018年10月10日) 6回
第4回(2018年11月22日) 11回
第5回(2019年2月14日) 0回
第6回(2019年3月18日) 1回
第7回(2019年5月16日) 1回
第8回(2019年11月14日) 15回
第9回(2023年2月13日) 60回
※ほねゆき調べ
とりあえず、議事録で「整骨院」が出てくる回数をす調べたんですが、最新の第9回は白熱してそうでした。笑
では、ほねゆきの感想も交えながら、なるべく順番に切り抜いていきましょう。
長いのでお気をつけて。
三橋 裕之 (公益社団法人日本柔道整復師会元理事)さんのプレゼンより一部抜粋
いきすぎた広告、あるいは医療の内容に近いようなものを記載したものは排除しなければいけないと思っているところです。
そのような中で、例えば表記するのであれば、(中略)「接骨院」のほかに、例えば「整骨院」という表記も一般的には流通しているわけで、検討専門委員会の中でも、厚労省のほうから「これは現在認めている」ということも発言されているところから、できれば、いわゆる整骨院も含めていただければいいかなと思っているところです。
2018年7月18日 あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師等の広告に関する検討会(第2回)議事録
広告の議論でなぜ施術所の名称のことを言っているのでしょうか。謎です。
前田 和彦 (九州保健福祉大学 教授)さんの発言より一部抜粋
もともと私自身も薬学部のほうに在籍しておりますが、その中で薬局という言葉と、病院の中の調剤所という言葉が出てきます。調剤所というのは法律上の正式な名称なのですが、これは薬局と呼んでもいいとされているわけです。その理由は、長い間その名前で使ってきたから、つまりは調剤所のほうが国民(患者)にとっては分かりづらくなるというところから、薬局でいいのだということが出ているのです。
もしそうであるならば、今、国民や患者さんが、(中略)治療院とか整骨院といって、それを病院だと勘違いする人がどの程度いらっしゃるのかと考えると、(中略)それほどいらっしゃることはないのかなと思っています。逆に、それを正式な法律上の名称のみにした場合には、かえって分かりにくくなるのかなというのは、薬局の例からも感じられます。(中略)
整骨院という名称はある程度認めていく方向で、これを認めることにおいて、別途、これで規制が掛かる部分が逆に出てくると思います。それは無資格者のほうなのです。
2018年7月18日 あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師等の広告に関する検討会(第2回)議事録
まぁ、名称だけで間違える人は現代ではそういませんよね。
次は第3回の検討会を見てみましょう。
新井哲也※参考人(愛知県豊橋市保健所健康政策課 専門員)さんの発言を一部抜粋
例えば接骨院のほうで、最近、接骨院ではなくて整骨院にしたいという、名称の要望がよくあります。
これは正に接骨ではなくて整体というものが、やはり頭の中にあって、そういうものをメニューとして提供したいがために、接骨ではなく整骨という形で名称を使いたいというのがあるのではないかと、私たちは捉えています。
2018年10月10日 あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師等の広告に関する検討会(第3回)議事録
柔道整復施術所が「整骨院」を使いたがるのは、①整体を受けたい客のニーズを柔整師が拾うため、②施術所の広告規制を免れようと考えるため、③施術所数が全国で増えてきて差別化を図りたいため、ではないかという指摘です。
「整骨院」から「整体」をイメージさせて、柔整師の都合の良い方向に持って行ってるのではないかということでしょうか。
三宅 泰介 (健康保険組合連合会 医療部長)さんの発言を一部抜粋
柔道整復における整骨という表記が問題とされて、1つの課題とされておりますけれども、私どもといたしましては、この「整骨」、骨を整えるという概念がまだまだ国民には分かりにくく、また「整体」ですとか、あるいは「整形(外科)」と混同する懸念もあり、現状ではなかなか認められないと。つまり現行法令を遵守すべきだと考えているところです。
2018年10月10日 あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師等の広告に関する検討会(第3回)議事録
整形外科と混同する懸念はないだろと思いますが、広告の表記としての「整骨」は法律違反です。
三宅 泰介 (健康保険組合連合会 医療部長)さんの発言を一部抜粋
こちらは整体ということで誘引されて、実際は整骨院の施術だったというパターンです。(中略)新聞のチラシに「整体院がオープンした」ということで出掛けてみたところ、行ってみたら整骨院だったという御報告があります。患者さん本人は整体という保険適用外の施術を受けに行ったつもりなのですけれども、保険適用の施術として請求があったというものです。
2018年10月10日 あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師等の広告に関する検討会(第3回)議事録
今回の主題とは少し離れますが、確かにこれは最近多い気がします。
何か違反があるのであれば、早急に処罰されるべきです。
これも「整骨院」を是正しようとする派閥の理由の一つになっているわけですね。
次は第4回の検討会を見ていきましょう。
三宅 泰介 (健康保険組合連合会 医療部長)さんの発言を一部抜粋
2018年11月22日 あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師等の広告に関する検討会(第4回)議事録
整骨院ですけれども、(中略)整骨院と称して整体を取り入れているようなところがあるということになると、やはりこれもまたまぎらわしくなってきますので、ここも接骨院ということで違いを明確にしたほうが国民にはわかりやすいと思います。
まぁ、一理あるのかなとも思います。
しかし、それは無資格の整体院の名称を規定して初めて語れることであって、柔道整復の施術所において「整骨院」を禁止しただけでは、違いは明確になりません。
そもそも、柔整師は無資格のいわゆる整体院の取締強化を望んでいるわけではない。
個人的には、これは全く本質をついていない発言に思います。
加護 剛 (奈良県橿原市健康部 副部長)さんの発言より一部抜粋
鍼灸接骨院、整骨院、これにつきましては、橿原市では全て統一して、鍼灸院、接骨院と表示を変えていただいております。
2018年11月22日 あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師等の広告に関する検討会(第4回)議事録
奈良県橿原(かしはら)市の保健所では、なんと「整骨院」という届出は認めていないようです。
このように、結局は施術所の開設届を受理するかどうかは、その提出先の方針によるところが大きく、実際に施術所に関する違反の指導をどこからどこまでするかというのも、管轄の保健所次第です。
ただ、何を根拠に「整骨院」がダメだと指導?しているのかは非常に気になりますね。
私からすれば、しっかりとした決まりがないことを、ただ「ダメ、変えなさい」と勝手に言っているだけのようにも思えます。
三宅 泰介 (健康保険組合連合会 医療部長)さんの発言を一部抜粋
整骨院、これを認められないかという話でございますけれども、(中略)まだまだ国民の皆様の中には、医療との違いがわからない状況では認められません。例えば医療機関と施術所を間違える人はいないのではないかという御意見もあろうかと思いますが、現実としては、似たような名称をつけてしまうと混乱が起きてしまいます。
特に患者さんの多くは体の不調を訴えられている高齢者の皆様で、適切な判断ができない場合もございますので、確実にわかるだろうというのは違うというところでございます。
2018年11月22日 あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師等の広告に関する検討会(第4回)議事録
はいはい、次です。
福島 統 (東京慈恵会医科大学 教育センター長(公益財団法人柔道整復研修試験財団 代表理事) )さんの発言を一部抜粋
実は名称の問題は、患者さんに対して、接骨院か整骨院かという話がありましたけれども、その名称だけではちょっと論じられないところがあって、例えば国家資格を有しているとか、それから、それぞれ法律がありますから、法律上こういうことができることが認められている国家資格であるということとセットにしないと、その名前は患者さんを惑わすのではないかと思うわけです。そういう意味では、それこそ個人的な意見を言ってしまいますけれども、鍼灸接骨院はよくないだろうと。
やはり接骨院で、どういう資格を持っているから法律上何をするのだと。できればそれで保険適用はこれだけだとか、それはセットだと思うのですね。
2018年11月22日 あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師等の広告に関する検討会(第4回)議事録
確かに、「接骨院」か「整骨院」かという名称だけで、柔道整復の施術所なのか医科なのかとか、保険適応がどうだとかというのを患者さんに判断させようということにそもそも無理があるのかもしれません。
この発言を受けて三橋先生はこのように言っています。
三橋 裕之 (公益社団法人日本柔道整復師会元理事)さんの発言より一部抜粋
2018年11月22日 あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師等の広告に関する検討会(第4回)議事録
例えば何とか接骨院、その下に骨折、脱臼、打撲、捻挫、挫傷、(中略)名称は、接骨院であろうが整骨院なり、その下にこういうことをやりますよと、こういうことができるのですよというものを書くことで十分にその区分けができるのかなと思います。
では、次は第5回を飛ばして第6回の検討会を見ていきましょう。
日巻医事課長補佐の発言より一部抜粋
(山口 育子(認定NPO法人ささえあい医療人権センターCOML 理事長)さんからの意見を代読)
従来、「接骨院」だった施術所名が、最近は特に都市部において、「整骨院」と表記されるところがふえてきています。しかし、考えてみれば、整骨とは何をすることなのか、施術内容から考えても理解できず、多くの国民が気軽に利用している整体院にあやかり、同様に気軽な気持ちで利用しようという心理を期待しているとしか思えません。(中略)整体師が無資格者で、柔道整復師が有資格者であることを考えると、そこに誇りを持って接骨院を維持するのが本来の姿ではないかと考えます。
そもそも「整骨」とは、具体的に骨をどうすることを指しているのでしょうか。名称として使用するのなら、それを明確に国民に説明することが必要と考えます。
そして、明らかに説明された整骨を実施するための具体的な施術内容を示してからの議論だと思います。それと、広告のその他の御意見になるとは思います。
2019年3月18日 あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師等の広告に関する検討会(第6回)議事録
そもそも、明治8年の医師学術試験規則により、条件を満たしたものは「整骨科医術開業免許」が与えられ…..それが今の柔道整復です。
「整骨」という字だけで言うと、さらに何百年も前からあります。
無知がゆえにこのような的外れな発言をしてしまいます。
これに対して、三橋先生はこのように答えます。
三橋 裕之 (公益社団法人日本柔道整復師会元理事)さんの発言より一部抜粋
実際に、今、我々、日本柔道整復師会は17,000人会員がおりますけれども、その中で、整骨院の表記をしているのが6,739名、接骨院が7,627名、福岡県においては、整骨院が591、接骨院が10、北海道は、732が整骨院、67が接骨院、大阪は、1,030が整骨院、接骨院が183、長崎県においては、整骨院が156、接骨院が2という現状があります。地域性もあると思います。「何で整骨はだめなのか」僕もよく理解できないのですけれども、骨を整復するから整骨院で間違いないと思うのですね。
確かに、骨を接ぐから接骨院という名称もありますけれども、私の恩師のところが、今年でちょうど開院60周年になりますが、ずっと整骨院という名称をつけています。ですから、今、例えば技術のある人が、古い先生方は特に整骨院という名前をつけている傾向が割と多くて、そこをちょっと勘違いされているかなと。
整骨院でも接骨院でもどちらでも地域の住民の方々は多分理解していただいていると思います。以上です。
2019年3月18日 あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師等の広告に関する検討会(第6回)議事録
そういう背景もあるようです。
では、次は第7回です。
三橋 裕之 (公益社団法人日本柔道整復師会元理事)さんの発言より一部抜粋
我々から望んでいることは、本当に無資格のところをとにかく何とかしていただきたいと。整骨院とか接骨院という議論も出ていますけれども、無資格を何とかしていただければ、我々は例えば接骨院で統一しても構わないという思いもあります。
本当に逼迫しています。さっき料金表示とかいろいろありましたけれども、無資格は何をやっても構わないので、とんでもないことを書いてきます。
例えば、「外傷」という言葉を使っている無資格の治療院もありますので、しっかり表記できること、無資格はこれだけだよということを言っていただければ、一番我々としては望むところだろうと思っております。本当に簡単なのですが、我々の要望はこれだけです。
2019年5月16日 あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師等の広告に関する検討会(第7回)議事録
追い詰められた?のか、無資格を取り締まれとか、そんなことに話を持って行っちゃいました。
第8回を覗いてみましょう。
三宅 泰介 (健康保険組合連合会 医療部長)さんの発言を一部抜粋
私どもといたしましても、この「整骨院」という名称につきましては反対をさせていただきます。
2019年11月14日 あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師等の広告に関する検討会(第8回)議事録
松田医事専門官(厚労省)さんの発言より一部抜粋
2019年11月14日 あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師等の広告に関する検討会(第8回)議事録
「整骨院」。(中略)これについても広告不可というふうに今回、事務局案として提示させていただいております。(中略)過去「整骨」というものについては、法律の告示のほうではお示ししたものはありません
ここにきて改めて、厚労省としては過去に「整骨」は広告の事項として認めたことはないという確認です。
医事専門官は広告と施術所の名称を同じものだという解釈でいるようです。
山口 育子(認定NPO法人ささえあい医療人権センターCOML 理事長)さんの発言を一部抜粋
2019年11月14日 あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師等の広告に関する検討会(第8回)議事録
整骨院。これはやはり意味不明で、いつのころからか整体に似た名前として登場したのではないかという気がいたしますので、一度も法律の中に出てきていないのだとしたら、この際、しっかり接骨院であるということに統一する必要があるのではないかと考えます。
柔整師の皆さん、「意味不明だ」と言われてますよ。この方の意見は聞くに値しません。
面白くなってきました。
三橋 裕之 (公益社団法人日本柔道整復師会元理事)さんの発言より一部抜粋
いわゆる非医業類似行為。この対策がしっかりしていただけるのであれば、我々業界としては、例えば新規開業者については(中略)「接骨院」でいいと思います。(中略)
調査をした件数が1万5460件。そのうちの6,631件が整骨院。それから、接骨院が7,532件という内容が現状です。(中略)野放しという言い方は変ですが、それを通常に受けてしまって、今になって、これは全く認めていないのだというのはちょっとおかしい話かなと思います。
それから、実は2年前の検討専門委員会の中で医政局医事課の担当者が(中略)「整骨院」はいいのかという問い合わせに対して、医事課の担当者が、いわゆる広辞苑で辞書を引くと、骨接ぎ、接骨と出てくる。ですから、認めていますという発言を公の場でしている事実があります。
2019年11月14日 あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師等の広告に関する検討会(第8回)議事録
厚労省の対応の矛盾も当然あるわけです。
釜萢 敏 (公益社団法人日本医師会 常任理事)さんの発言より一部抜粋
「整骨院」を外した形の事務局案に賛成いたします。
2019年11月14日 あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師等の広告に関する検討会(第8回)議事録
やはり医師会としては、柔整師はぜひ潰しておきたい。
続いて、なぜか三橋先生がこんなこと言っちゃいました。
三橋 裕之 (公益社団法人日本柔道整復師会元理事)さんの発言より一部抜粋
私どもといたしましても、この「整骨院」という名称につきましては反対をさせていただきます。
やはり一般概念として、国民の皆様になかなか理解しにくい、あるいは整形、整体と紛らわしいということで、これまでも意見を述べさせていただきました。
2019年11月14日 あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師等の広告に関する検討会(第8回)議事録
日整はどうしていきたいんでしょう。
最後に、第9回の検討会ですが、これが第8回から2年3ヶ月後です。
ここでは、これまでの議論の内容でガイドラインを作成することに、みな異議を唱えませんでした。
よって、おおむね以下のような内容でガイドラインの案が作成されることになったようです。

今後、またどうなるかは分かりませんが、しっかりと見つめていきたいと思います。
まとめ
改めて、やはり柔道整復師の施術所の名称の選択肢が実質的になくなっていくことに対しては、これは柔整師は自らの活動の幅が狭まることと同義だと捉えるべきなのかなと思います。
「あー、整骨院は使えなくなるんだー」と思うだけじゃなくて、しっかりとその流れを見つめて、自身の意見を持つことが重要なのかもしれません。
政治だからね。ありがとうございました。
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